腹痛・便秘・下痢
公開日:2016/05/17
最終更新日:2025/07/08

この記事を監修したドクター
子どもと女性のための病院と研究所国立成育医療研究センター
突然の腹痛や便秘・下痢など、女性は特にお腹のトラブルを抱えがちです。不調の原因は女性特有の疾患や臓器の不調に加えて、食生活や心の問題などさまざまです。まずは不調の原因を特定して、それぞれに合った対処法を取り入れて改善していきましょう。
腹痛・便秘・下痢の原因は?
女性のお腹は子宮や卵巣なども詰まっていることから男性と比べて複雑で、トラブルを引き起こしやすい傾向があります。
腹痛には、ずっしりと重たい痛みやチクチクするものをはじめ、大事な会議や緊張する人との面談など、ストレスのかかる場面でお腹がグルグルと鳴ったり、トイレの場所を気にしたりといったさまざまなケースがあります。腹痛や便秘、ガスに悩まされている人も少なくありません。
疾患としては、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、急性胃炎、過敏性腸症候群をはじめ、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患が原因で腹痛が起こることもあります。また、加齢と共に胃腸の機能が衰えていくことで消化不良を起こし、お腹の張りや痛みが出ることも知られています。
不規則な生活リズムやストレスによる自律神経の乱れも腹痛や便秘・下痢につながる原因になりますので、意識して生活リズムを整えていくことも大切です。
なお、女性の腹痛や下痢は病気だけでなく妊娠の可能性もありますので、注意が必要です。
対策方法は?
腹痛が起こった時には、下着やベルトなど体を締め付けるものは緩めて、横になるなど楽な体制で安静にしましょう。もし激しい痛みや嘔吐が続く場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
下痢の際には、体内の水分が失われるため、水分補給が大切です。また、おかゆやうどんなどの消化の良い炭水化物をしっかりと食べましょう。脂肪の多い肉やラーメン、菓子パン、ケーキなどは控えましょう。
市販の薬を使用する場合は、薬剤師に症状を相談のうえ、適切な薬を選んでもらうと良いでしょう。
腹痛や下痢は臓器だけでなく、心の問題も影響します。食べ物を消化したり、便意を感じたりするのは自律神経の働きです。ストレスで腹痛や便秘、下痢が起こるのは、自律神経の乱れが原因ですので、ストレスを溜めないことも大切です。
また、腹部のトラブルには病気が隠れている可能性もあります。体質とあきらめたり、我慢したりせずに、まずは病院を受診して原因を確かめましょう。原因がはっきりすれば、対処法がわかります。長年苦しんできた不調も、改善、解決する方法はあります。
受診の目安は?
上記のように激しい腹痛や嘔吐が続くようであれば速やかに受診しましょう。
また、下痢や便秘を繰り返したり、腹痛とガスが同時に起こったりする場合は、3~6ヵ月前と比べて、症状が変化しているかどうかがポイントです。徐々に痛みが強くなる、つらさが増すようなら、病気の可能性がありますので受診しましょう。
便秘の場合、排便が3日以上無かったら、便秘症と考えます。最近では、排便があってもすっきりしない感覚が残ると、それも一種の便秘と考えられています。下痢の場合は、3週間以上続いたら、慢性下痢と診断されます。同じような症状を繰り返していたら、一度は内科でみてもらいましょう。
不調の位置は、おへそより上なら、胃や膵臓、胆嚢に問題がある可能性が。おへそより下なら、腸や子宮、膀胱の可能性があります。腹痛の位置に加え症状が起こるきっかけや前兆も、原因を探るための大事な判断材料になります。
診断法は?
排便によって改善する腹痛があるか、便通異常(下痢や便秘)が持続するかなどの診断基準に当てはまるかどうかで診断します。クローン病や潰瘍性大腸炎、乳糖不耐症、あるいは大腸がんなどの病気を確認するために、場合によっては大腸内視鏡検査を行うこともあります。
治療法は?
腹部のトラブルの治療法は、原因や症状によって異なります。食事によって改善する場合もありますし、ストレスや不安を可能な限り少なくすることで改善する場合もあります。不安や抑うつが続き、それが原因となっている場合は抗うつ薬や不安を軽減する薬を使用することや、ストレスマネジメントとして自律訓練法を試みるのも良いでしょう。
下痢や便秘の症状を改善するためには、腸機能改善薬や鎮痙薬が使われることもあります。冷え症の女性で、月経時に下痢をするときには、温経湯(うんけいとう)などの漢方薬が効くこともあります。いずれにしても、心と体をひとつながりのものとしてみる治療法が大切です。