胃痛・胃もたれ

公開日:2016/05/17

最終更新日:2021/10/18

鈴木 眞理 先生

この記事を監修したドクター

政策研究大学院大学名誉教授 跡見学園女子大学 心理学部臨床心理学科 特任教授鈴木 眞理 先生

食べ物に付着したアニサキス、細菌やウイルスが原因

急にお腹が痛くなって、吐き気、嘔吐、下痢や発熱などの症状も伴う場合、寄生虫や細菌による食中毒の可能性があります。

生魚(さば、イワシ、カツオ、サケ、イカ、サンマなど)を食べて2~8時間後にみぞおちの激しい痛み、吐き気、嘔吐がある場合、アニサキス症が疑われます。救急外来を受診して、内視鏡で寄生虫をつまんで取ってもらいます。

食中毒は発症する季節、食品、潜伏時間に特徴があります。おにぎり・弁当・サンドイッチなどの素手で扱う食品を食べて30分~6時間に腹痛、嘔気、嘔吐、下痢があれば黄色ブドウ球菌感染症が疑われます。細菌が作った毒素が原因なので、潜伏時間が短いのが特徴です。

夏に生の海産物を食べて11~18時間に激しい腹痛、下痢嘔吐、発熱があれば腸炎ビブリオ、生卵の調理品を食べて8~48時間に吐き気や嘔吐が先行して、腹痛や激しい下痢や高熱が起こる場合はサルモネラ、特に11~1月に二枚貝の生食後24~48時間に吐き気、嘔吐、下痢、腹痛があり1~2日で治癒するならノロウイルス、加熱不十分の鶏肉を食べて2-7日に高熱や頭痛が先行して、次いで腹痛や下痢が起こるのはカンピロバクターによる食中毒が疑われます。

腸管出血性大腸菌O157など病原性大腸菌は牛などの家畜が保有しているので、加熱不十分な牛肉を食べた後、平均3~5日に強い腹痛とほとんどが血液のような下痢が起こります。救急外来や内科を受診します。

いろいろな原因で胃炎や胃潰瘍になる

胃では、胃酸によって強い酸性状態を保ち、ペプシンというタンパク質分解酵素で食物を溶かして消化します。

胃自身を溶かさないのは、粘膜が出す粘液が防御しているからです。粘液には傷を修復する作用もあります。このバランスが崩れると、粘膜の表面がただれて血がにじむような胃炎や、粘膜がえぐられるような胃潰瘍になります。胃潰瘍は胃酸が直接に粘膜を刺激する空腹時や夜間に痛むのが特徴です。

暴飲暴食、アルコールやコーヒーの飲み過ぎ、タバコの吸い過ぎは胃炎を起こして、胃痛や胃もたれの原因になります。非ステロイド性消炎鎮痛薬、副腎皮質ステロイド薬、抗生物質は胃炎や胃潰瘍を起こしやすい薬剤です。

ヘリコバクター・ピロリ菌感染症は胃十二指腸潰瘍や胃がんの原因になる

ヘリコバクタ―・ピロリ菌は強酸の胃の中に住み着くことができる細菌で、子どもの頃に感染します。昔は井戸水からの感染が多かったのですが、衛生環境が良くなった現在は、主に唾液を介した家族内感染になり、20歳以下の感染率は10%以下と低くなりました。

この細菌による粘膜の障害が続くと、感染部位が広がってヘリコバクター・ピロリ感染胃炎になります。多くは無症状ですが、胃痛や胃もたれなどの症状が出たり、胃十二指腸潰瘍になることがあります。

数十年後に胃粘膜の胃酸などを分泌する組織が消失した状態、すなわち、萎縮性胃炎になり、一部は胃がんになります。そこで、ヘリコバクター・ピロリ菌が感染しているかどうかを血液や呼気で検査して、陽性の場合は内服薬で駆除します。20歳以下の若者に無料で検査を行い、将来の胃がん予防を行う自治体もあります。

他の臓器の病気でも胃のあたりが痛む

逆流性食道炎は、強い酸性の胃液や胃で消化される途中の食物が、食道に逆流して、食道が炎症を起こす病気です。胸やけが主症状ですが、胃もたれも起こります。お臍の右下にある虫垂の炎症でも、初期はみぞおちの痛みがあります。

胆のうに石がある人では「油っぽい食事や食べすぎの後に、みぞおちが絞られるような激しい痛みを感じる」という胆石発作が起こることがあります。脂肪の消化のために胆のうが胆汁を出そうと収縮するからです。15~20分程度で痛みが治まるのも特徴です。

膵臓はみぞおちの高さで背中側に位置します。アルコールの飲み過ぎや胆石が膵臓から出る膵液の出口をふさぐと急性膵炎を起こします。みぞおちの痛みで、強さは個人差があり、吐き気、嘔吐、発熱も伴います。これらは、消化器内科で内視鏡、超音波、CTスキャンなどで検査します。

なぜ、心理的なストレスで胃痛が起こるの?

厚生労働省の統計で、受診患者では、胃のもたれ、腹痛・胃痛、胸やけ、下痢、便秘などの腹部症状を有する群はそうでない群に比べて、心理的ストレスが多いことが明らかとなっています。すなわち心理ストレスによって腹部症状は出現しやすいのは確かです。

自分の意志で動かすことができない臓器は交感神経と副交感神経からなる自律神経がバランスよくコントロールしています。副交感神経は胃酸分泌や胃の蠕動運動を活発にします。緊張や不安など心理ストレスだけでなく、手術や外傷などでも交感神経が優勢になり、胃の血管を収縮させて血流や胃の粘液分泌など防御因子を減らすので、胃酸やペプシンなど胃の攻撃因子が強くなって胃炎や胃潰瘍ができやすくなります。

また、心理ストレスは、胃内容排出時間(胃に入った食物が排出されるまでの時間)を遅らせて、膨満感やもたれを起こします。ある製薬会社(エスエス製薬 2011年)の調査で、胃痛のある人では、51.6%が理不尽なことを言われても我慢すると回答しましたが、胃痛のない人では21.5%でした。職場や家庭でストレスを我慢している人の方が胃痛持ちが多いことがわかりました。胃痛を感じる方は、ストレスとの良い付き合い方を工夫する必要がありそうです。

機能性ディスペプシアという病気がある

精密検査をして、胃炎や胃潰瘍など異常を認めないのに、食後の胃もたれ、少し食べただけでお腹がいっぱいだと感じる早期満腹感、みぞおちの痛み、みぞおちの焼ける感覚などの症状が3カ月以上継続していることがあります。はたらき(機能)がわるくなったことが原因と考えられて、機能性ディスペプシア(functional dyspepsia)という病名がつけられています。

原因は、食べ物に合わせて胃を膨らませたり、食べ物を胃から十二指腸に排出したりする機能が落ちている、胃・十二指腸が胃酸や脂肪に対して知覚過敏となっている、不安やストレスで胃腸の動きに不調をきたしやすい、ヘリコバクター・ピロリやサルモネラ感染の既往、先天的な胃の形(爆状胃)、さらに、アルコール、喫煙、不眠などの生活習慣の乱れが指摘されています。消化器内科で生活改善の指導と薬物治療が行われます。

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