膠原病 全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、全身性強皮症
公開日:2016/05/17
最終更新日:2024/05/24
この記事を監修したドクター
政策研究大学院大学名誉教授 跡見学園女子大学 心理学部臨床心理学科 特任教授鈴木 眞理 先生
膠原病の症状
関節痛が多くの膠原病に共通する症状です。全身性エリテマトーデス(SLE)ではあちこちに移動する関節痛、関節リウマチ(RA)では関節炎が起こる場所は固定しています。シェーグレン症候群では、関節リウマチと同様に手の指関節が痛くなることがありますが、腫れや熱感をともなわないことが多いです。発熱の程度は、病気によって、さまざまです。
皮膚の変化も、膠原病に特徴的な症状です。全身性エリテマトーデス(SLE)は、蝶形紅斑(鼻から両頬にかけて現れる蝶のような形をした皮膚の赤み)をはじめとして、さまざまな皮疹が起こります。全身性強皮症では手指が腫れて、皮膚が固くなることとレイノー現象が特徴です。レイノー現象とは、寒冷刺激や精神的緊張によって、手足の末梢の血管が発作的に収縮し、血液の流れが悪くなり、手や足の指の皮膚の色が蒼白、暗紫になります。冷感、しびれ感、痛みをともなうこともあります。また、血流が回復すると、逆に充血し赤くなります。レイノー症状はひどくなると、指先などに潰瘍を起こすこともあります。
検査法
膠原病を疑う場合、血液検査で抗核抗体を調べます。抗核抗体は、細胞核の構成成分を抗原とする自己免疫の総称です。抗核抗体が陽性であれば、それぞれの病気に特徴的な抗体を検査します。SLEが疑われる場合には、抗2本鎖DNA抗体、抗Sm抗体、抗RNP抗体、抗リン脂質抗体を、シェーグレン症候群は抗SS-Aや抗SS-B抗体を、全身性強皮症は抗セントロメア抗体や抗Scl-70抗体です。
全身性エリテマトーデス(SLE)
男女比は1:9、特に20-40歳の女性に多い病気で、日本の患者数は6~10万人といわれています。症状は “全身性”という病名のとおり、全身の様々な臓器に障害を起こしやすいという特徴があります。
初発症状は発熱、だるさ、関節痛です。蝶形紅斑は必ず起こるわけではありませんが、あれば診断の大きな手がかりになります。光線過敏症、口腔内潰瘍、脱毛が見られることがあります。潰瘍は通常の口内炎と違って、痛みがなく、口の中の上あごの固い部分などによく起こります。皮膚、腎臓、肺、中枢神経などの内臓のさまざまな症状がいろいろな組み合わせと重症度で、一度に、あるいは、経過とともに起こってきます。
SLEの治療は免疫抑制効果のある副腎皮質ステロイドを使用し、使用量は徐々に減らして長期に飲み続けます。早くて高い効果を得るために副腎皮質ステロイドを点滴で大量に使用するステロイドパルス療法を行うことがあります。副腎皮質ステロイドが効果不十分か、副作用が強い場合に、免疫抑制薬を使うことがあります。
シェーグレン症候群
男女比は1:17、女性に多く、全年齢で発症しますが、50歳代にピークがあります。また、関節リウマチの約20%にシェーグレン症候群が合併します。日本の患者数は10~30万人といわれています。膠原病のなかでは、症状が軽く、病気に気付かない患者さんもいます。
眼の乾燥(ドライアイ)と口の乾燥(ドライマウス)が特徴的な症状です。涙が少なく、悲しい時でも涙が出ず、眼がごろごろしたり、痒みや痛みを感じます。唾液が出ないので、口が渇いて虫歯が多くなり、トーストなど乾燥した食品を食べるのが苦手になります。また、鼻腔や腟の乾燥も起こります。関節痛、レイノー現象、発熱、強い疲労感などの症状が出ることもあります。
シェーグレン症候群の治療は、口、眼の乾燥を抑えるための対症療法が中心になります。点眼、口腔清潔と人口唾液などを使用します。
強皮症
強皮症には全身性強皮症と限局性強皮症があります。限局性強皮症は皮膚のみの病気で、内臓を侵さない病気です。一方、全身性強皮症は皮膚だけでなく内臓が硬くなることが特徴です。ただし、全身性強皮症の中でも発症より5~6年以内は進行するタイプと進行はほとんどないか、あるいはゆっくりのタイプがあります。男女比は1:12で、30~50歳代の女性に多く見られ、日本での患者は2万人以上です。
最初の症状はレイノー現象です。次に、手指の硬化が起こります。手指の腫れぼったさとこわばりがあり、指輪が入りにくくなったりします。爪のあま皮の黒い出血点、指先のへこんだ傷痕、指先の潰瘍も起こります。典型的な場合は、その後、手背、前腕、上腕、体幹と体の中心部分に皮膚硬化が進みます。肺に病変が起こると空咳や息苦しさが、腎臓なら高血圧、食道下部なら胃酸の逆流が起こります。手指の屈曲拘縮、関節痛も起こることがあります。
全身性強皮症を完全によくする薬剤はありません。皮膚には副腎皮質ステロイド少量内服、肺にはシクロフォスファミドなど、症状のある臓器にあわせた薬物療法があります。
もっと知りたい! ドクター監修の記事を続けて読む