冷え
公開日:2016/03/29
最終更新日:2021/10/12

この記事を監修したドクター
帝京大学ちば総合医療センター産婦人科 助教山口 広平 先生
冷える生活をしていませんか?
冷えの原因は…
夏冷えも冬冷えも同じ原因で起こっています。 冷え症の悩みといえば、昔は冬の話題でした。ところが最近では「夏冷え」という言葉が使われるほど、外の気温が30度を超えている日でも、冷えを感じている“夏冷え”が増えています。 原因は冷房です。エコ対策で冷房を控える場所が多くなっていますが、電車やオフィスや外出先の室温は、女性の体には低い設定です。 女性は男性より筋肉量が少ないので、体のなかで熱を生み出せる量も少なく、冷えやすいのです。また女性の夏の服装は、ノースリーブや薄手のワンピース、素足にサンダルなど、冷えやすい服装が多いからです。 体温は、自律神経の働きで一定に保たれています。暑い場所では体温を逃がし、寒い場所では体温を守ろうとする、体温調節の機能が備わっているのです。 寒暖差が7度を超えてしまうと、自律神経がうまく働かなくなり、自力で体温調節しきれなくなります。 冬も、暖房による寒暖差があります。寒暖差をカバーできない薄着で過ごしていたら、冷えがひどくなります。運動不足や食事の栄養バランスの悪さ、冷たいものの摂り過ぎによる冷えも、同じです。 夏冷え、冬冷えともに、ライフスタイルが原因となって起こりがちです。
冷えによって起こる不調はたくさんあります
冷えはさまざまな原因で引き起こされます。そして冷えが続いてしまうと、さまざまな症状や不調を招くようになります。 「冷えにともなって起こるおもな症状」 1 抜け毛・白髪・薄毛 2 くすみ・たるみ・のぼせ・むくみ・シワ・シミ・クマ 3 歯周病・歯肉の変色・歯肉の萎縮・歯肉の腫れ 4 イライラ・不眠・不安感 5 ドライアイ・老眼・近眼・疲れ目・かすみ 6 肩こり・腰痛・頭痛・だるさ・疲れ・関節痛めまい・耳鳴り・月経痛・月経不順・アレルギー・便秘・下痢・動悸・ほてり・むくみ・肥満 7 ニキビ・乾燥肌・かゆみ また、単なる冷え症だと思っていたら、膠原病だったり、甲状腺などの病気の場合もあります。長く続くようなら注意して、婦人科や内科を受診しましょう。 「冷え症」は未病の状態ではありますが、女性の場合は、冷えがひどくなると、卵巣の機能が低下する可能性もあります。卵巣の機能が低下すると、女性ホルモンのバランスが崩れて、月経痛や月経不順などのトラブルに進んでしまうことも。妊娠しにくい体になることもあります。
血の巡りを改善しましょう
冷えは、血巡りの悪さによって起こります。 血液には、熱を運んで体温を調節する働きと、臓器に酸素や栄養を運び、二酸化炭素や老廃物を回収する働きがあります。血巡りが悪いと、内臓の働きも悪くなり、免疫力も低下します。体も冷えて、だるさ、下痢、月経不順…全身に不調が起こるようになります。 また、新陳代謝も悪くなります。肥満、肌のくすみ、シワ…。 冷え症を改善すれば、これらの不調はよくなります。健康的な体型になって、アンチエイジング効果もあります。冷えを改善することを考えましょう。
冷えにひそむ病気をチェック!

冷えがひどい、冷え以外にも気になる症状がある…などのときは、大きな病気が背後にある可能性もあります。 □ むくみがある むくみはリンパ液の巡りの悪さが原因です。血巡りが悪く冷え症の人に多い。女性ホルモンの問題が影響している可能性があります。婦人科で相談してみましょう。 □ 貧血がひどい 体の中で、なんらかの出血が起こっている可能性があります。子宮内膜症や骨盤内の癒着の恐れもあります。婦人科へ。 □ 特定の部分が冷える 腰や背中、足に部分的な冷えがあるとしたら、過去のけがや手術の影響かも。原因がわからない場合も多く、マッサージや全身を温める入浴などが有効です。 □ 左右片側が冷える 左右どちらか片側全体に冷えを感じるなら、大きな病気の可能性もあります。一度、内科や神経内科で検査を受けましょう。 □ ほてりがある 実は、ほてりも冷えの一種です。女性ホルモンのバランスが崩れているトラブルの可能性があります。人前に出るときだけほてるなら、赤面症の可能性も。 □ 汗が出る 女性ホルモンの影響で冷えていると、汗が出ることもあります。手だけなど特定の部位から大量に出る場合は皮膚科へ行きましょう。 □ しびれがある 寒くてしびれを感じる人もいます。しかし、冷えていないときでも、しびれを感じるなら、整形外科を受診します。 □ 変色している 紫や赤に変色していたら血巡りの悪さが原因です。急に、皮膚が白くなるようならレイノー現象(膠原病)の恐れもあります。膠原病専門医のいる内科を受診しましょう。
治療法としては漢方薬が有効です
原因として、貧血、低血圧、女性ホルモンの低下、自律神経失調症、甲状腺機能異常などが考えられます。 貧血、女性ホルモンの低下、甲状腺機能異常などがある場合には、おもに西洋医学的な薬剤を使って治療します。 漢方薬が女性の冷え症には効果的です。西洋医学では病気ととらえにくい冷え症も、漢方では治療の対象です。冷えは放置すれば月経痛をはじめ、さまざまな症状につながると考え、冷えの解消を重視します。 治療には全身の気、血、水のバランス改善が大事。そのため、その人の”証(タイプ、体質)”や症状、それぞれに合わせた幅広い漢方薬が処方されます。 単に冷え症といっても、人によって使う漢方薬は千差万別。医師の診断を受けて使用することが大切です。医師の処方箋があれば、ほとんどの場合、健康保険が使えます。 「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」「温経湯」「桂枝茯苓丸」「加味逍遥散」などが女性の冷え症によく使われる漢方薬です。 また、生活習慣の見直し(養生)も漢方治療のひとつです。入浴、食生活、衣服などの医師からのアドバイスも重要です。 NPO法人 みんなの漢方 リンク → http://www.mkampo.net/navi_cd1_hieshou.html