子宮頸がん予防接種(HPVワクチン)【小学1年~高校1年の方向け】
公開日:2022/05/27

この記事を監修したドクター
関東中央病院産婦人科 医長稲葉 可奈子 先生
ポイント
①HPVワクチンは子宮頸がんなどHPV(ヒトパピローマウイルス)による病気を予防するための予防接種
②小学校6年生~高校1年生の女子はHPVワクチンの定期接種の対象で、無料で接種できる
③全3回を無料で接種するには高1の9月までに1回目の接種が必要
HPVワクチンとは
HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)は子宮頸がんなどHPV(ヒトパピローマウイルス)による病気を予防するための予防接種です。HPVの感染を予防することで、HPV感染による子宮頸がんや尖圭(せんけい)コンジローマ、肛門がん、中咽頭がんなどの予防につながります。
子宮頸がんのほとんどがHPV感染が原因であるため、HPVワクチンで子宮頸がんを予防することができます。
HPVは性交渉で感染するため、初めての性交渉より前の接種が最も有効で、17歳未満で4価HPVワクチンを接種すると子宮頸がんの88%を予防できます。すでに性交渉の経験があっても有効ですが、なるべくはやめの接種がより有効です。
HPVワクチンは小学校6年生〜高校1年生の女子を対象とした定期予防接種で、対象者は原則無料で接種できます。高校1年生の3月までに接種した分が助成の対象となります。
※中学校卒業後に高校に進学していない人の場合は、進学していた場合の学年の数え方で「高校1年生の3月」までが対象となります。
HPVワクチンは全部で3回接種します。全3回の接種に約6ヶ月かかるので、3回全部を無料で接種するためには高校1年生の9月までに1回目を接種しましょう。
この期間を過ぎてしまうと自費での接種となります。全3回の接種で約5万円以上かかるので、大人になってから自分で接種しようと思うと高額になってしまいます。ワクチンの有効性も、17歳になるまでに接種する方が有効ですので、なるべく無料で接種できる定期接種の対象期間の間の接種がおすすめです。
若いから大丈夫、じゃないがん、それが子宮頸がん
子宮頸がんは、子宮にできる「がん」の1つです。毎年約1万人が子宮頸がんと診断され、子宮摘出などの治療を受けています。また、毎年約2900人が子宮けいがんにより亡くなっています。
子宮頸がんが一番発症しやすいのは20-40代と若いのが特徴で、子宮頸がん患者の約9割で子宮摘出などの治療が必要になります。また、子宮頸がんによる年間死亡者数は約2900人で、海外ではマザーキラーとも呼ばれています。
子宮頸がんの原因であるHPVは約8割の人が一生に一度は感染すると言われているとてもありふれたウイルスです。つまり、だれもが子宮頸がんになる可能性があるのです。
「若い人でもかかる」「だれでもかかりうる」と聞くと不安になるかもしれませんが、子宮頸がんは、「予防接種」と「がん検診」とで、予防することができます。
HPVワクチンですべてのHPV感染を防げるわけではないため、HPVワクチンを接種した人も、20歳をすぎたら2年ごとに子宮頸がん検診を受けましょう。であれば、がん検診だけ受けていればいいかというと、そうではありません。
子宮頸がん検診は子宮頸がんの手前の前がん病変の段階で早期発見するための検査です。前がん病変の段階では自覚症状はなく痛くもかゆくもありませんが、数ヶ月ごとに産婦人科で生検などの検査を受けて経過観察が必要です。進行していたらどうしよう、という不安も伴いますし、前がん病変は女性にとってはとても負担な状況です。また、もし高度異形成に進行した場合に行う円錐切除術は早産のリスクを高めます。
早期発見でがんにさえならなければよいわけではなく、HPVワクチンによって前がん病変のリスク自体を下げることは女性にとってはとても重要です。前がん病変をも予防することができるのはHPVワクチンだけです。
HPVワクチンは安全なの?
2013年にHPVワクチンの副反応ではないかと疑われた症状について大きく報道されましたが、その後、国内外で多数の大規模研究が行われ、副反応と疑われた症状の発生頻度はHPVワクチンを接種したグループと接種していないグループとで差がないことが確認されています。つまり、副反応と疑われた症状とHPVワクチンとには因果関係は示されていません。WHOは「HPVワクチンは極めて安全性が高い」としています。
では報道された症状はなんだったのかというと、HPVワクチンとの因果関係はなく、接種後ストレス反応(ISRR)もしくは機能性身体症状とされています。
接種後ストレス反応は、接種によるストレスや不安がきっかけであらゆる予防接種において起こりうる症状です。
機能性身体症状は、接種有無に関係なく、心が不調になることにより出現する身体症状のことです。心が不調になることで、思いもかけない身体症状が現れることがあるのです。何らかの身体症状があるけれども、身体症状に見合うだけの異常所見がないことが特徴で、知覚症状(痛い、痺れるなど)や運動症状(痙攣、歩行困難など)、自律神経症状(動機、下痢など)など、様々な症状が生じることがあります。
もし接種後になにか気になる症状がありましたら、HPVワクチンが原因かどうかにかかわらず、接種した病院で相談しましょう。
HPVワクチンによる一般的な副反応は、接種時の疼痛やその後の接種部位の腫れで、いずれも短期間で改善します。
新型コロナワクチンと同じ筋肉注射ですが、痛み方は異なります。新型コロナワクチンは接種時はあまり痛くないですが、翌日痛みや発熱がでるのが特徴です。一方で、HPVワクチンは接種時はそれなりに痛いのですが、時間とともに痛みは軽減していき、翌日にさらに痛くなるということはありません。
注射や採血で気分が悪くなったことがある人は、横になって接種することもできますので、接種前に相談しましょう。
HPVワクチンを接種してもらう方法
定期接種の対象の方は、お住まいの市区町村から接種票が送付されます。届いていない方、紛失された方は、お住まいの市区町村へ連絡をしてみて下さい。(問合せ先は自治体ホームページなどでご確認下さい。)そして、対象医療機関の病院に連絡して、予約をとりましょう。
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