厚生労働省研究班(東京大学医学部藤井班)監修

Q34.「大きな震災の後からPTSDが治りません。」

A34.「心の傷を回復、軽減するには一人で悩まないで周りのサポートを適切に受けて。」

どんな症状? どんな病気?

PTSD(外傷後ストレス障害)とは、強烈なショック体験や脅威的、破局的な外傷的出来事(地震、火災、暴力、レイプなど)にさらされて強いストレスから生じる心の障害です。地震や災害では住んでいる家や職場が壊れたり、ときには家族や大切な人を失ったりという大きな喪失体験を味わいます。今までの当たり前に続いて生活が身に起こった出来事を境に変化を強いられることで心が不安定になります。典型的な診断基準の症状以外に不安、不眠、抑うつ、自律神経症状、希死念慮なども見られます。

どんな診察をするの?

PTSDの診断基準では、①つらい記憶がふとした時によみがえる『再体験』 ②つらい記憶の苦しみを避ける『回避』『反応麻痺』 ③入眠や睡眠障害、怒り易くなる、集中力低下、驚愕反応などの『覚醒亢進症状』があります。

治療や対処法は?

心に大きなショックを与える出来事で、死の恐怖や無力感を強く味わっているので、本人の口から語ることができる内容を時間をかけながら注意深く熱心に聞いていきます。誰かに聞いてもらえるだけでも安心できたりするものです。状況が変わってしまった生活への適応障害がでることもあります。震災被害の場合は、医療だけでなく、行政から援助を受けることも重要です。また、ネットワークを作り、お互いにサポートできる体制を作ることで症状が軽くなることもあります。
薬物療法としては、集中力困難、抑うつ気分、全般性の反応麻痺などには抗うつ薬、抗不安薬を使います。出来事と関連したことからの回避やフラッシュバックによる驚愕反応には抗不安薬を使います。時には薬の力を借りて心の安定をはかり、心の回復をします。
大きな震災では、子供を失った母親の苦しみを癒すこと、親を亡くした子供に気を配ることなど、個人の意思の力ではどうにもならないことが多くあります。地域のサポートや住民が協力すること、また、時間が物事を解決してくれる、心の傷を和らげてくれると信じることも必要かと思います。