ふらふらする・疲れやすい(起立性調節障害)
公開日:2016/07/04
最終更新日:2024/08/20
この記事を監修したドクター
東京大学医学部附属病院小児科 助教絹巻 暁子 先生
起立性調節障害は体質の一種ですが、思春期に症状が目立つことが多いです
わたしたちの身体は、自律神経のはたらきにより血圧や心拍といった循環が安定して維持されているため、不調を感じることなく過ごすことができます。この自律神経のはたらきが不安定になると、起立など体勢の変化によって血圧や心拍が変動しやすくなり、身体に様々な不調を生じます。これを起立性調節障害といいます。
小学校高学年から中学生・高校生にかけての思春期世代のうち10%程度の子どもたちが、この起立性調節障害に悩まされていると言われています。症状は、めまい、立ちくらみ、お風呂でのぼせる、動悸、息切れ、朝起きられない、だるい、食欲不振、腹痛、頭痛、車酔い、など様々で、これらの症状はすべて起立性調節障害によるものとして説明可能です。
もともと自律神経機能が弱い体質の人に生じやすく、それまで問題なく過ごせていたとしても、思春期に伴うホルモンバランスの変化や心理社会的な要素が加わることで自律神経のバランスが崩れて症状が目立つようになってくるのです。
起立性調節障害を正しく理解し、向き合うことが大切です
病院でまず行うのは、症状の種類やその程度に関する聞き取りです。次に、血液検査や心電図検査を行い、貧血、甲状腺機能異常、不整脈など他の疾患の可能性がないかを調べます。他の疾患の可能性がなさそうということになれば、起立性調節障害の型を分類するために、起立試験(10分間安静に横たわったのちに起立し、心拍数・血圧・心電図波形にどのような変化が起こるか確認する検査)を行います。
起立性調節障害では、規則正しい生活、十分な水分・塩分の摂取をすることが治療の基本ですが、症状が強く日常生活や学校生活に支障をきたしている場合には、内服薬による治療も行います。また、自律神経とこころの関係を切り離すことは難しく、これが起立性調節障害の複雑なところです。
子どもは体調不良が改善する見通しが立たず不安に陥ると、ますます症状を強く感じます。そのような場合には心理カウンセリングが役立つこともあります。思春期世代に多い疾患のため、周囲からの理解を得られず「怠けグセ」「さぼりグセ」などと誤解を受けることもありますが、起立性調節障害は基本的にからだの疾患であり、気の持ちようで治るものではありません。
思春期を過ぎると共に自然に症状が出なくなることも多いですが、回復には数年かかることもあります。子ども自身が悩んでいることも多く、保護者や学校関係者など周囲の方は本人の体質や体調を十分に理解し、根気よく寄り添う姿勢が大切です。
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