女性と喫煙

公開日:2016/05/17

最終更新日:2021/10/15

平野 茉来 先生

この記事を監修したドクター

帝京大学医学部附属病院 産婦人科平野 茉来 先生

喫煙はもちろん、受動喫煙の有害性も高いのです

喫煙は長い歴史の中で作られた習慣ですが、WHOによれば、喫煙関連疾患の死亡者数は、現在年間約500万人、2030年には1000万人に上ると推定され、タバコ規制枠組み条約(FCTC、2005年2月発効)など、世界的な取り組みが行われています。

タバコの煙には、4000種類以上の化学物質が含まれ(そのうち200種類は有害)、なかでも、ニコチンの依存性と交感神経刺激作用、一酸化炭素の酸素運搬阻害作用、活性酸素の酸化作用や炎症惹起作用、タールの発がん作用が、大きなリスクをもたらします。

女性ではさらに、肝臓の薬物代謝酵素(チトクロームP450のアイソエンザイム)を誘導して、エストロゲンの代謝を促進し、その働きを弱める作用が知られています。

また、本人が吸い込む煙(主流煙)だけでなく、副流煙や呼出煙による受動喫煙も有害であることがわかっています。

喫煙は全ての女性の年代で大きなリスクが伴います

20代、30代の日本人女性の喫煙率は、2019年にはそれぞれ7.6%、7.4%です。10年前に比べて減っては来ているものの、女性の喫煙は、女性のどのライフサイクルにおいても、さまざまな疾患や病態をもたらします。

思春期には、家庭や周囲の影響で喫煙が始まり、ほかの薬物依存の誘導や月経障害の一因になります。妊娠・出産時には、血流の障害や酸素欠乏から早産や流産、死産、胎盤異常などの合併症の増加や胎児の発育障害を生じ、乳児突然死症候群や母乳への分泌も生じます。また、不妊や、早期閉経の原因ともなります。更年期以降では、女性ホルモンの低下に加えて、動脈硬化のリスクを高め、発がんを促進します。老年期には、QOLに関わる歯周病や骨粗鬆症、認知症のリスクを高めます。

そのため禁煙をすることは、生涯のどの時点でも、それ以降の疾患を防ぐ効果が非常に高い治療法といえます。喫煙の誘いにもきっぱりと「ノー」といえる自立した女性を目指しましょう。

         

*2004年、厚生労働省多目的コホート研究・その他は2004年米国公衆衛生総監報告並びに、英国医師会報告による *「からだの科学増刊」女性のウェルネスガイド「女性とたばこ」P73より

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