フレイル、生活不活発病

公開日:2016/04/24

最終更新日:2024/09/02

国立成育医療研究センター

この記事を監修したドクター

子どもと妊婦さんのための病院と研究所国立成育医療研究センター

年齢が高くなるにつれて体力が低下し、病気になりやすくなることがあります。そのような状態はフレイルと呼ばれ、将来日常生活で介護が必要になることも。予防により健康を取り戻せる可能性もあることから、気になる場合は早めに内科などを受診しましょう。

フレイルとは

年齢が高くなるにつれて体力が低下し、病気になりやすくなる状態に陥ることがあります。こうしてストレスに対して脆弱になり、不健康を引き起こしやすい状態はフレイルと呼ばれています。フレイルの状態では、将来、転倒してしまったり、日常生活で介護が必要になってしまったりする危険が高まります。

フレイルを理解する上で重要な事は、フレイルになってしまうと必ず悪化の一途をたどるわけではないということです。適切な対応を行う事で心身機能を改善し、介護が必要な状態になることを予防し、また健常な状態に戻る可能性があります。そのため、以下のフレイルの評価を読んでみて自分がフレイルに当てはまるかな、と感じたら早めに内科などを受診しましょう。

フレイルの判定基準

フレイルの具体的な判定基準については今もさまざまに議論がなされています。
代表的なものでは、以下の5つの内、3つ以上が該当する場合にフレイルと判定されます。

1.体重減少
2.筋力(握力)の低下
3.疲労感
4.歩行速度の低下
5.身体活動の低下

また、日本では、市区町村などの自治体で介護認定を受けていない65歳以上の高齢者に対して「基本チェックリスト」と呼ばれる質問用紙を郵送し、記入し返信してもらうという介護予防事業を行っています。この基本チェックリストで総合点が高いとフレイルの危険性が高い、とくに8点以上で要注意と言われています。こうした取り組みに参加することも早期にフレイルを発見するために重要と考えられます。

フレイルになりやすいのはどんな人?

調査によって異なりますが、65歳以上になると1割前後の方がフレイルになると言われています。ただ、高齢になるとフレイルと判定される方は増えてきて、80歳以上になると実に3割以上の方がフレイルになると言われています。従って、高年齢はフレイルの危険因子の一つといえます。
高年齢以外にも、さまざまな危険因子が報告されています。高血圧や糖尿病、骨粗鬆症、心臓病、呼吸器疾患などの慢性疾患に加えて、体脂肪率が高く筋肉量が少ないなどの体型の特徴もフレイルの危険因子です。また、そうした身体的要因だけでなく、精神・心理的あるいは社会的な要因が関わっている事も指摘されています。例えばうつや初期の認知症を含むもの忘れ、社会的な活動の低下や閉じこもりといった状態も密接にフレイルに関連しています。こうした要因がお互いに影響を与えながら悪循環を形成し、フレイルに陥っていくと考えられます。そのため、フレイルの予防、治療にあたってはこうした多くの要因を適正にコントロールし、悪循環を断ち切ることが重要であると考えられます。

フレイルに関連する多くの要因
フレイルに関連する多くの要因

フレイルを予防するためには・・・

フレイルを予防・治療するためには、フレイルに関連した多くの要因をコントロールする事が大切になってきます。
慢性疾患(持病)のある方は医師の指示に従い、持病をきちんとコントロールしていきましょう。新型コロナウイルス、インフルエンザや肺炎などの感染症によって大きく体力が低下することがありますので、予防接種やうがい、手洗いなどを通して感染予防を行っていくことも重要です。
運動、とくに筋力を強化するような高強度のレジスタンストレーニング(筋肉に負荷をかけるトレーニング)が有効と言われています。ただ、どの程度の運動が高強度であるかは人によって異なり、毎日の歩数を増やすというシンプルな介入で効果があったという報告もあります。運動に対して不安がある場合には医師あるいは専門的な医療スタッフに指示を受け、無理のない範囲で継続的に運動を行っていきましょう。習慣的な運動は認知機能にも良い影響を与える可能性があることが指摘されています。
バランスのとれた食事も重要です。高齢者で体重が減少すると特に筋肉量が減少しやすく、大きく体力の低下を招いてしまいます。そのため、体重減少や低栄養状態を避けることが一番です。1日3食主食、主菜、副菜のバランスがとれた食事をとりましょう。なかでもタンパク質やビタミンDはフレイル予防において重要ですが、同時に不足しやすい栄養素でもあるので、意識して摂取するようにしましょう。
囲碁や将棋などの知的なゲーム、楽器の演奏、読書、日記をつけるなどの知的活動は認知機能を活性化させフレイル予防に有効です。また、人との交流を行う社会活動も、心理面を活性化し、フレイルを予防するため有効と考えられます。

フレイルの概念はもともと海外で発展してきました。英語ではFrailtyと呼ばれています。Frailtyの日本語訳としては従来「虚弱」が用いられていましたが、「虚弱」では加齢に伴って不可逆的に老い衰えた状態、という印象を与え、フレイルの可逆性(介入によって健常な状態に戻る可能性があること)とは相容れません。そこで、平成26年日本老年医学会から新たに提唱された日本語訳が「フレイル」です。「フレイルティ」という案もあったようですが、長すぎるという意見もあり「フレイル」になったようです。
「フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント」参照

もっと知りたい! ドクター監修の記事を続けて読む