早発閉経(早発卵巣不全)

公開日:2018/05/17

最終更新日:2023/10/10

鶴賀 哲史 先生

この記事を監修したドクター

東京都立駒込病院 緩和ケア科、東京大学医学部附属病院 届出研究員鶴賀 哲史 先生

共著:平池 修 先生

早期閉経とは、どんな病気?

早発閉経とは、40歳未満で閉経になったため月経がなくなることをいいます。早発閉経には、①卵子が完全に消失してしまった早発卵巣不全、②卵子が存在しているが排卵しないゴナドトロピン抵抗性卵巣症候群の二種類があります。

30歳未満の1000人に1人、40歳未満の100人に1人にみられ、無月経の患者さんの5〜10%を占めると言われています。一般的に早発閉経の患者さんの自然妊娠率は相当低いですが、約5~10%は妊娠することがあるといわれています。

病気の原因としては、ターナー女性などの染色体異常、自己免疫疾患(甲状腺炎や重症筋無力症など)、代謝性疾患(糖尿病やアジソン病など)、放射線被曝や抗がん剤、卵巣の外科的切除、環境汚染物質、ガラクトース血症などの酵素欠損、などさまざまのものがありますが、75〜90%は原因不明となっています。

症状と診断

生理不順や無月経、原因不明の不妊、更年期障害のような症状(のぼせ、ほてり)などがあります。長期間のエストロゲン不足により、骨粗鬆症や性器萎縮(膣が乾燥したり萎縮したりする)、冠動脈疾患や脳卒中などのリスクが上がると考えられています。

早発閉経は、一般的には、
①40歳未満の続発性無月経
 (これまで正常にあった月経が、妊娠や排卵障害疾患以外の理由で3~6ヶ月停止したもの) 
②ゴナドトロピン*高値
 (FSH≧40mIU/mL)
③エストロゲン低値
 (エストラジオール<15〜30pg/mL)
を満たすものとされます。

治療

妊娠希望の有無によって異なります。

①妊娠希望の場合
エストロゲン療法を行うことによって、FSHを低下させ、卵胞機能の改善、排卵が再開することを期待します。その後調節卵巣刺激法や体外受精などの生殖補助医療を組み合わせたりしますが、効果は定まっていません。
自己免疫疾患が関与している場合には、副腎皮質ステロイド療法としてプレドニゾロンを投与することがあります。
米国では卵子提供という選択肢があります。提供された卵子と夫の精子を体外受精させ、その受精卵を患者さんの子宮に移植します。日本では、体外受精・胚移植を行うことは婚姻関係のある夫婦にのみ認められており、倫理的な問題も多く、日本で施行することはほぼできませんが、医学的審査をした上でおこなう組織があります。
最近では、原始卵胞体外活性化法(in vitro activation: IVA)といって、減少した卵子を効率的に成長させる新しい治療法が開発されています。手術によって卵巣を体外に取り出し、卵巣内にある原始卵胞を体外で成長開始させてから再び手術で体内に戻すというもので、ごく一部の施設でのみ行われています。

②妊娠希望のない場合
妊娠希望がなくても、早発卵巣不全では骨粗鬆症や性器萎縮、冠動脈疾患のリスクが上がるため、これらの予防としての治療が必要になります。エストロゲン・プロゲステロン補充療法を少なくとも一般的な閉経年齢である50歳前後まで行います。

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