月経痛(生理痛)
公開日:2016/03/28

この記事を監修したドクター
東京都立駒込病院 緩和ケア科、東京大学医学部附属病院 届出研究員鶴賀 哲史 先生
目次
婦人科を受診するタイミングは?
月経痛(生理痛)は、子宮内で月経血を押し出そうとするホルモン(プロスタグランジン)の働きによるものです。このメカニズムは、陣痛とほとんど同じなので、多少の痛みは生理的な現象です。
しかし、月経痛によって、仕事や学業能率の低下や生活に障害が出る場合は、婦人科を受診するタイミングです。
それに、年単位で痛みが増強する場合、月経時以外に疼痛がある場合も、婦人科に相談しましょう。
月経困難症とは?
月経痛が強く、日常生活に支障をきたす場合を月経困難症といいます。
腹痛が強いため、鎮痛剤が必要であるとか、仕事ができないような場合は月経困難症といってよいでしょう。
腹痛、腰痛、悪心(気持ちがわるくなる)、嘔吐、いわゆる貧血(血液がうすくなっているわけではないがフラフラする)、頭痛、頭重、食欲不振などがよくある症状です。
月経痛(月経困難症)には2種類あります。
ひとつは「機能性月経困難症」と呼ばれているものです。
毎月きちんと排卵すると卵巣から2種の女性ホルモン(卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン))が分泌されます。
特に、黄体ホルモンは、妊娠しないと剥がれて月経として出血してくる子宮内膜に作用して、月経痛の原因となります。
子宮内膜の内側にプロスタグランディン(Pg)という局所ホルモンを増加させます。このPgが子宮を収縮させて、腹痛や腰痛、悪心の原因となるわけです。
この機能性月経困難症は、特にこれといった病気がなく起こる月経痛です。
もうひとつは、「器質的月経困難症」といって、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気によるものです。
近年は、子宮筋腫は比較的若い人にもみられます。また子宮内膜症は年々増加傾向にあり、20代の前半からよくある病気です。このような病気は月経困難症の原因となります。
婦人科では、月経痛がどちらによるものなのかを検査して診断してもらうことが大切です。診断は、比較的容易につきます。
検査は、内診や超音波検査で、子宮筋腫や子宮内膜症などが認められないかどうかを見ます。
適度な運動は月経痛軽減に効果があります
月経前は、骨盤の血流の流れがうっ滯します。うっ血は、月経痛を強くすることにつながります。
これを改善するために適度な運動は有効です。月経の始まる1週間くらい前からジョギング、ウォーキング、スイミング、あるいはヨガやエアロビクスなど、を行いましょう。もっと簡単な全身の屈伸運動などでも効果があります。
我慢せずに痛み止め(鎮痛剤)を服用します
市販の鎮痛剤でもかまいません。
鎮痛剤を選ぶには、痛みの原因となるプロスタグランディンをブロックできる薬(プロスタグランディン合成阻止剤)がより効果的です。
クリニックでも、ボルタレンなどの鎮痛剤を処方されます。また、痛みがかなり強く、早く痛みをとりたいときは、鎮痛剤の坐薬は、速効性があります。
このような鎮痛剤を服用するときのコツは、早めに服用することです。もう我慢できないといった強い痛みがきてから服用するより、早めに、あるいは痛みが始まる前に服用したほうが、少量でよく作用します。
低用量ピル(OC)は月経痛に効果的です
機能性月経困難症(特に子宮や卵巣に子宮筋腫や内膜症などがない月経痛)の原因は、排卵した後、卵巣から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用が原因です。
この原因となる黄体ホルモンの分泌を抑えれば、月経痛は予防できます。つまり排卵を一時的にストップすればよいわけです。
それには低用量ピルが効果的でしかも安全な方法です。ピルは排卵をストップすることから避妊薬としても使いますが、月経痛治療薬としても使うことができます。
超低用量ピル(LEP)は、月経困難症治療薬、子宮内膜症治療薬として、健康保険で治療できます。
低用量ピルでどのくらい月経痛が軽くなりますか?
鎮痛剤を服用しなければ過ごせなかった人でも、多くの場合、鎮痛剤が必要なくなります。月経中、仕事を休んだり、仕事の能率が落ちていた人も、多くの人が仕事も日常生活も楽に過ごせるようになります。
ピルを服用している間は排卵をストップしますので、ほぼ100%の避妊効果があります。排卵を抑えますので、月経血の量も少なくなり、ナプキンの使用量がぐっと減ります。月経期間も短くなります。月経痛だけでなく、過多月経の人にも適しています。
また、月経前症候群(PMS)にも有効です。PMSは、月経の1~2週間前から頭痛、乳房痛、イライラ、むくみ、腰痛、吐き気などいろいろな心と体の症状があり、月経の開始とともに症状が軽くなる病気です。低用量ピルは、月経痛だけでなくPMSの症状を軽くすることもできます。
漢方薬も月経痛治療に使われています
漢方薬は、女性の不調改善に効果のある薬が多くあり、有効であることが知られています。医師の処方であれば健康保険が使えます。
月経痛には、当帰芍薬散、桂皮茯苓丸、加味逍遥散などが使われることの多い漢方薬です。