パニック症
公開日:2017/04/07
最終更新日:2025/07/15

この記事を執筆したドクター
国立成育医療研究センター 女性総合診療センター 女性精神科 診療部長久保田 智香 先生
パニック症は、突然に強い不安をともなうパニック発作が繰り返し起こる病気で、「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安や回避によって生活に支障をきたします。治療には、抗うつ薬による薬物療法や、考えや行動を見直す認知行動療法が効果的です。「思っていたよりも大丈夫だった」という経験を積み重ね、「自分で対処できる」と思えることを目指します。
パニック症とはどのような病気か
パニック症は、予期せず突然に強い恐怖や不安が襲ってくる「パニック発作」が繰り返し起こる病気です。発作は数分以内にピークに達し、次のような症状が4つ以上現れます(DSM-5-TRをもとにまとめ)。
パニック発作の症状
・動悸
・発汗
・体の震え
・息切れ、息苦しさ
・のどの詰まり感
・胸の痛みや不快感
・吐き気、お腹の不快感
・めまい、ふらつき
・寒気、またはほてり
・手足のしびれ、感覚の異常
・現実感のなさ、自分が自分でない感じ
・「自分でコントロールできない」「どうにかなりそう」という恐怖
・「死んでしまうのではないか」という恐怖
この発作が繰り返され、1ヶ月以上「また発作が起きたらどうしよう」という不安(予期不安)か、発作を避ける行動の変化(回避)が続いていると「パニック症」と診断します。
診断には、薬や他の病気(甲状腺疾患、心疾患など)が原因ではないことを確認し、社交不安症、恐怖症、PTSDをはじめとする他の不安症と区別します。
予期不安と回避
パニック症のつらさは、「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安と、それを避けよう行動を制限する回避にあります。
たとえば、電車の中で発作を経験した人が、予期不安から電車に乗れなくなってしまうことがあります。回避によって一時的な安心感は得られますが、次第に行動範囲が狭まり、日常生活に大きな支障が生じます。
治療では、この予期不安と回避に向き合い、少しずつ不安に慣れるようにサポートします。「大丈夫だった」という経験の積み重ねが、回復への大切なステップになります。
パニック症の発症
パニック症は、一生のうちに1〜4%の人がかかり、女性は男性の約2倍かかるとされています。好発年齢は20〜30代ですが、若い方や高齢の方にもみられます。
治療によって早期に良くなることもありますが、再発や、発作が完全には無くならないこともあります。そのため、「すぐに完全に治そう」とするよりも、「不安との付き合い方を身につける」ことが大切です。
パニック症の治療
薬物療法
抗うつ薬が有効で、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)というタイプの薬が効果が高く、副作用も比較的少なくなっています。
一時的な発作の対処にベンゾジアゼピン系という不安をやわらげる頓服が使われることがありますが、長期間の使用で効きづらさや依存のリスクがあるため、慎重に使い方を決めます。
精神療法
認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy: CBT)が有効です。CBTでは不安をセルフモニタリングし、さまざまなアプローチに取り組みます。内部感覚曝露(Interoceptive Exposure)では、走る、過呼吸するなど、発作時の体の感覚を自分でわざと起こして慣れる練習を行います。認知再構成では、危険を過大評価していないか、現実的な考え方に近づけて自分で対処できることを増やすよう治療者と協働的に検討します。
対面でのCBTが可能であれば良いですが、インターネットを経由してのCBTも効果的であることが報告されています。モバイルアプリケーションの開発も進んでいます。






