不安という感情

公開日:2016/05/17

最終更新日:2025/12/24

久保田 智香 先生

この記事を執筆したドクター

国立成育医療研究センター 女性総合診療センター 女性精神科 診療部長久保田 智香 先生

不安という感情の持つ意味

不安は、私たちに「何か危険があるかもしれない」と知らせる心のアラームのような感情です。研究では、不安は実際の危険に対するアラームになるだけでなく、起こり得るリスクを予測して注意や準備を促す働きもあるとされています。この仕組みは本来、身を守るために役立つものですが、アラームが大きく鳴り続けたり、鳴る必要のない場面で鳴ったりすると、つらさや生活のしづらさにつながることがあります。

また、不安を感じると、心拍が速くなる、息が浅くなる、体がこわばるなどの反応が起こります。これは危険にすぐ対応できるよう、体を緊張状態に切り替える自然な反応ですが、続きすぎると疲れや不調につながることがあります。

不安になった時の対処法

不安を感じたときは「不安を消そうとしすぎない」ことを大切にします。不安や動悸、息苦しさなどの体の反応を危険そのものと捉えず、「今、心のアラームが鳴っている」と一歩引いて気付くことが出発点です。不安を避けるために行動を控えたり、その場から逃げたりすると、一時的には安心できますが、「避けないと危ない」という感覚が強まり、不安を感じる場面が増えるとともに、回避行動も広がってしまうという長期的なデメリットがあります。なお、不安の中には、危険を知らせたり、備えを促したりする役割をもつ「役に立つ不安」もあります。不安に気付いたうえで、回避に走るのではなく、必要な準備や確認といった現実的な行動につなげることは、適切な対処です。回避せずに今の行動を続けたり、呼吸を整えながらその場に留まったりすることで、不安が時間とともに自然に弱まることを実感できれば、不安があっても生活を続けられるという感覚は少しずつ育っていきます。

これって病気かな?と感じた時には

不安が非常に強く、生活に支障をきたす場合には、病的な不安として治療の対象になることがあります。たとえばパニック症では、動悸や息苦しさなどを伴う強い恐怖発作が突然起こり、その再発を恐れて行動を避けるようになります。広場恐怖症では、逃げられない・助けが得られないと感じる場所を避けるようになります。また全般不安症や社交不安症では、過剰な心配や人からの評価への不安が続き、回避や確認行動によって不安が慢性化していきます。
このような不安が続く場合は、精神科や心療内科などに相談することで、薬物療法や認知行動療法(CBT)といった、症状や生活状況に合った専門的な治療につながることがあります。治療を受けることで、不安のつらい時期を一人で耐え続ける必要がなくなり、日常生活をより早く取り戻せる可能性があります。

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