産後の仕事とワークライフバランス

公開日:2016/05/18

最終更新日:2021/10/25

春名 めぐみ 先生

この記事を監修したドクター

東京大学大学院医学系研究科母性看護学・助産学教授(助産師)春名 めぐみ 先生

”産後は子育てプロジェクトの始まり

産後は、これまでの生活に「子育て」という新しいプロジェクトが加わります。夜間の睡眠も十分とれない中で、産後の体調を回復させながら、授乳や赤ちゃんのお世話をどのようにしていくか、準備や工夫、周囲のサポートが必要です。

仕事をいつ、どのように再開するかということについても、この新たに加わった「子育て」というプロジェクトをどのように進め、仕事と両立するかにかかっています。「子育て」は予定通りにはいかなくて当たり前という心のしなやかさも必要です。

早く仕事復帰したい人も、ゆっくり復帰したい人も

社会保険制度では、「産休」は産前6週間(多胎は14週)、産後8週と定められています。この間、雇用主は女性を働かせてはいけない、ということになっていますが、もし「どうしても早く職場復帰したい!」という方は、産後6週以降に医師の許可(診断)があれば働けます。

逆に、なるべくゆっくり職場復帰したい女性は、産休後最大2年間「育休」をとることができます。これは、産後の女性の心身の状態や職場復帰への気持ち、そして保育園など育児支援環境(保育園、パートナーや家族の協力体制)、経済的事情などから、職場と話し合って決めていけばよいでしょう。

育児と家事の責任は、パートナーとシェアしましょう

だからこそ、パートナーの意識や周囲の協力が何よりも大事なポイントになります。パートナーがいる人は、できるだけ妊娠中から、育児や家事の分担や責任について話し合い、意識をシェアしておきましょう。パートナー以外の様々なサポートを十分に知って、柔軟に活用して子育てをしていくことも重要です。無理をして、すっかり疲れ切ってしまう前に、サポートを探しておいて受けることがコツです。

乳幼児がいる共働き夫婦の1日の育児・家事時間は、妻は約7時間であるのに対し、夫は約1時間であり(総務省:平成28年社会生活基本調査)、日本の男性の家事・育児時間は欧米諸国の2から3分の1程度という実情があります。その背景には、日本では、男性1日当たりの労働時間は7時間半で、欧米諸国の平均5時間17分と比較しても長く、そのために家事や育児をする時間が少ないという現状があります。この「子育て」プロジェクトをうまく進めていくためにも、男性が家事・育児にかかわることは重要であり、そのためにも日本の社会全体の意識を変えていく必要があります。

多くの人を巻き込んで、育児と仕事を楽しみましょう

自分の体力と気力、仕事に対する前向きな気持ちで、育児+仕事(+家庭の行事)を楽しみましょう。いずれにせよ、小さな子どもを育てている時期は、女性の人生の中で最も忙しく、大変で、楽しい時期です。パートナーだけではなく、親や兄弟、友人、ご近所、保育園やシッターさん、行政の支援、職場の仲間まで、頼れるものはなんでも頼りましょう。

子育てはたくさんの人たちを巻き込むもの、そして仕事は、社会に貢献できるばかりでなく、自分を育て、自分の人生における自己実現を助けてくれるもの。現代のママにとっては、両方ともとても大事な「人生の宝物」です。

考え過ぎず、まずはやってみよう!

最近では、母乳育児を助けるさまざまなグッズ(搾乳器や冷凍パックなど)、移動やおむつ替えを楽にするツール(バッグやキャリーなど)、地域や職場の子育てママのコミュニティ、行政の相談制度など、たくさんのアイディアや支援が充実しています。

ワークライフバランス(work–life balance)とは、“仕事と生活の調和”で、一人ひとりがやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて、多様な生き方が選択、実現できることです。子育て期だけでなく、今後の長い人生のファーストチャレンジとして、仕事と生活の調和をとることを始めてみましょう。思い通りにいかないことも多くあるかもしれませんが、それも糧となる経験の一つです。

あまり考え過ぎず、まずはやってみよう、軌道修正はあとで状況に応じてやっていこう、とゆったり構えて取り組んでください。その経験は、きっと仕事に新しい視点を加え、将来のキャリアアップにもつながるからです。Take it easy!

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