基礎体温
公開日:2016/07/28
最終更新日:2023/06/26
この記事を監修したドクター
東京大学大学院医学系研究科母性看護学・助産学教授(助産師)春名 めぐみ 先生
目次
自分の体を知る秘訣は、基礎体温にあります
基礎体温とは、生命を維持するのに必要最小限のエネルギーしか消費していない安静時の体温です。つまり、寝ている間の体温を指していますので、朝起きて、すぐに舌の下で検温することが大切です。専用の婦人科体温計を用いて測定します。
女性の体は、排卵したあとに、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌に合わせて、少しだけ体温が上がります。基礎体温を継続して測定していると、この低温期から高温期への移行があることで、排卵が起こったことがわかるようになるのです。
また、女性は、女性ホルモンの関係で、排卵前と排卵後では、体の状態が大きく変わります。目覚めてすぐに検温することで、自分の大切な体のリズムがわかります。
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基礎体温でわかる月経周期のこと
基礎体温を測っていると、自分が今、「低温期」あるいは「高温期」にいるのかがわかります。「排卵」のタイミングもわかります。また、「そろそろ月経がくるな」ということもわかります。
月経が28日周期の場合、月経の初日の1日目~排卵までの約2週間は、低温期(個人によってバラつきがあります)です。排卵が起こると、その後、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が始まるので、低温期より0.3~0.5℃、基礎体温が上昇する高温期に入ります。高温期は12~14日続きます。16日以上、高温期が続く場合は妊娠の可能性があります。
また、体温が上がらず、低温期が続いていたら、無排卵の可能性もあります。
注意すべき基礎体温のパターンがあります
基礎体温を測ると、わかってくるパターンがいくつかあります。気をつけたい5つのタイプを紹介します。
① 低温期が続く 無排卵月経の疑い
月経から次の月経までの間、基礎体温の値がほぼ変わらず横ばいで、さらにグラフが低い状態が続く場合は、無排卵月経の疑いがあります。妊娠するために必要な排卵ができていない可能性があります。
② 高温期が短い 黄体機能不全の疑い
排卵後のプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌期間が短くなっている状態。これは、卵巣の働きが悪くなっていて、不妊の原因となります。
③ M字パターン 黄体機能不全の疑い
高温期に入ったのにもかかわらず、一時的に基礎体温が下がるパターン。②の高温期が短いパターンと同様に、黄体機能不全の可能性があります。
④ 基礎代謝が低い人
基礎代謝が低いと、体に熱をつくれません。基礎体温を測ると、体温が低すぎる可能性があります。高温期になっても、低めの体温が続いていると、この場合も排卵に影響すると可能性があると考えられます。
⑤ 低体温の可能性
平熱が35℃台であったら、平熱が低い原因を確認することが大切です。心身のストレスや環境の影響などで、自律神経のバランスが崩れていたり、免疫力が低下している可能性も考えられます。
ひと月の体のリズムがわかります
卵巣のタイミングや月経のタイミング以外にも、女性の体の周期による体調のリズムなど、基礎体温でわかることはたくさんあります。基礎体温と合わせて自分の心、体、肌のリズムを知ると、毎日のケアにも役立ちます。
①月経期と排卵日がわかる
仮に月経が28日周期の場合、月経開始と同時に低温期が始まります。低温期は12日~16日間続きます。低温期のあと、高温期に変わったら、そのころに排卵があったと推定できます。月経開始日から13日~14日目に排卵が起こることが多いです。もちろん個人差はあります。排卵後は、高温期が約14日間続き、その後、体温が下がり、月経になります。また、基礎体温が二相性になっていれば、排卵があると推測できます。
②女性ホルモンの状態がわかる
高温期の基礎体温が全体的に低かったり、期間が短かったりする場合は、卵巣の働きが低下している可能性があります。また、低温期しかない場合は、月経があっても、無排卵の可能性があります。
③体のリズムがわかる
基礎体温で心身のリズムのパターンがわかります。イライラする、落ち込む、乳房が張る、吹き出物ができる、便秘や肩こりが起こるなど、よく起こる不調が月経周期のどのあたりに起こるのか、毎月のパターンがわかるようになります。
④低体温の可能性がわかる
一般的に、36℃未満を低体温と言います。低体温だと、冷えの症状が出たり、消化不良や疲れやすいといった不調が起こります。
⑤肌トラブルの周期がわかる
特に月経前の1週間の高温期は、皮脂の分泌が多くなり、吹き出物ができやすくなります。刺激のある食材や甘いもの、アルコールなどの摂りすぎに注意します。また、肌がトラブルを起こしやすい時期なので、新しい化粧品を使い始めることやピーリングなど刺激の強いケアは避けましょう。
⑥太りやすい時期がわかる
プロゲステロン(黄体ホルモン)には、水分を蓄える作用があります。そのため、月経前は水分が排出されにくく、むくみやすくなります。また、この時期は食欲が増したり、気分がイライラしたりして、過食に走りやすい時期でもあります。ダイエットをしても効果が出にくく、逆にストレスになります。ダイエットは、低温期に行ったほうが、ストレスが少なく、効果があります。
月経不順(生理不順)の受診の目安
月経不順とは、通常の場合25日~38日の周期(変動は6日以内)でくる月経が、何らかの原因で、長い期間生理がなかったり、反対に頻繁にきたりすることをいいます。月経周期には個人差がありますが、病院へ行く目安としては、3か月間月経がこなかったら病院を受診しましょう。排卵をしていない可能性があります。
基礎体温を習慣にするために
①近くに体温計を置いて眠りましょう
基礎体温は朝目覚めたら、起き上がらず、横になったままの状態で検温することが大事です。あらかじめ、枕元に婦人体温計を準備して寝ましょう。起床時間がまちまちな人は、起床後すぐに測り、時間をメモしておくといいでしょう。
②朝、目覚めたら起き上がらずに測定
基礎体温は、婦人体温計を使い、舌の下で測ります。婦人体温計を舌の裏側のつけ根に当てます。婦人体温計を舌で押さえ、口を閉じたままで検温します。検温中は口で息をしないようにします。
検温後、体温を基礎体温表に記録します。月経、体調不良、性交日なども記録しておくと、どんなことが体温や体調に影響するのかが自分でわかります。婦人体温計には、検温時間が短く、5分後の平衡温を予測する「予測式」と、実際に約5分間測る「実測式」があります。計測した基礎体温をパソコンやスマートフォンで管理できるシステムもありますので、自分の使い勝手に合わせて、使いやすいものを選ぶといいでしょう。最近は、スマートフォン用やパソコン用の無料アプリにデータを転送して、グラフ管理や月経や体調などが登録できます。排卵推定日や月経開始推定日も表示されるサービスもあります。
低温期と高温期の追加事項
基礎体温を記録して、自分の体の状態を知るには、1周期だけでなく、2~3周期は確認してください。1か月(1周期)では、平均的な体調が判断できないからです。また、基礎体温は安静時の体温で、小数点以下2ケタのところでの小さな変化を確認します。これは、女性ホルモンの変動を確認しています。