妊婦さんを支える支援制度

公開日:2016/07/04

最終更新日:2021/10/15

春名 めぐみ 先生

この記事を監修したドクター

東京大学大学院医学系研究科母性看護学・助産学教授(助産師)春名 めぐみ 先生

妊娠・出産というと、正常な経過であれば各種保険が適用されず自費診療が中心となりますが、実はさまざまなサポート制度が用意されています。困ったことがあったら、まずはお住まいの自治体に相談してみましょう。助成制度や給付金を含めてさまざまな支援体制があります。

母子健康手帳・妊婦健診費助成・母性健康管理指導事項連絡カード

母子健康手帳
妊娠の兆候があり、病院で妊娠確定の診療を受けたら、お住まいの自治体に「妊娠届」を提出して、母子健康手帳をもらってください。母子健康手帳は妊娠・出産・育児についての健康記録を一貫して記していくものですから、必ず妊婦健診のたびに持参しましょう。また、母子健康手帳にも医療給付の制度など記載されていますので、ご覧ください。

妊婦健診費助成
母子健康手帳交付時に、「妊婦健診費の公費助成」「母親学級・両親学級」などの案内を受け取ります。妊婦健診費の公費助成は妊娠が確定してからのおおよそ14回分の健診費用を自治体が助成する制度です。助成内容は自治体によって異なりますが、健診や採血・超音波などの検査が助成されます。母親学級・両親学級は、病院、市町村保健センター、保健所などで妊産婦とその家族のために実施されています。からだの変化、出産についての知識、赤ちゃんを迎えるにあたっての準備など、すこやかな妊娠と出産のための指導を受けることができます。参加費は原則無料(テキスト代などがかかることもあります)ですので、日程を確認して積極的に参加しましょう。

母性健康管理指導事項連絡カード
働いている妊婦さんは、主治医等が行った指導事項の内容を、妊産婦から事業主へ伝えるのに役立つ「母性健康管理指導事項連絡カード」があります。通勤緩和や休憩時間の延長が必要な場合、このカードを活用しましょう。

分娩にかかわる支援

出産育児一時金
妊婦さんの出産費用をサポートするために支給されるのが「出産育児一時金」です。子どもひとりにつき42万円(産科医療補償制度の掛け金1万6000円※2021年12月31日出生まで/1万2000円※2022年1月1日以降の出生を含む)が健康保険法にもとづく保険給付として支払われます。申請は、夫の扶養に入っている妊婦さんは夫が加入している健康保険に、働いている妊婦さんは自分が加入している健康保険に対して行います。多くの妊婦さんが、病院に出産育児一時金を直接支払ってもらって、退院時にはその差額のみを支払う「直接支払制度」あるいは「受取代理制度」という形をとっていますが、詳細は分娩予定の病院に確認しましょう。

分娩費用がない場合に
どうしてもお金がなくて分娩費用を工面できないという人は、自治体の福祉事務所にご相談ください。児童福祉法に基づいた「助産制度」を利用することになれば、自治体が指定した助産施設(病院)に入院・分娩することで、自己負担額を大幅に減らすことができます。

高額療養費制度
妊娠中に切迫流産・早産、妊娠高血圧症候群のような異常(病気)に対する検査や治療が必要になることもありますが、これらについては保険診療となります。入院が長期にわたるなど、1カ月の治療費がある一定額を超えると、それ以上の金額は健康保険の「高額療養費制度」が適用されます。負担の上限額は年齢や所得によって異なりますので、医療機関でご相談ください。

出産手当金と育児休業給付金
働いている妊婦さんで出産前後から復帰するまで無給となった場合は、「出産手当金」「育児休業給付金」が支給される制度があります。出産手当金は、産前産後休業の間、働いていたときの日給の3分の2相当額が健康保険から支払われます。育児休業給付金は、育児休業に入ってから最初の180日は休業開始前の賃金の67%相当額、それ以降は50%相当額が支払われます。くわしい手続きは、会社の担当部署や公共職業安定所(ハローワーク)に問い合わせてください。

赤ちゃんが産まれたら

赤ちゃんが生まれたら、まず14日以内に自治体へ「出生届」を提出します。その際、「児童手当」受給と「乳幼児等医療費助成制度」の手続きをしましょう。育児が難しい場合には、自分で抱え込まず、初期のうちに相談をしましょう。支援体制が活用できます。

児童手当
児童手当は中学校修了までの児童1人につき、3歳未満で月額1万5000円、3歳から小学校修了前までが1万円(第3子以降は1万5000円)、中学生は1万円を受け取れます。所得制限があり、所得が一定額を超えている場合は、特例給付として月額5000円が支給されます。

乳幼児等医療費助成制度
乳幼児等医療費助成制度は、0歳からある一定の年齢まで、医療機関にかかった場合、窓口で支払う各種医療保険の自己負担額(3割、ただし小学校入学前までは2割)分の一部あるいは全額が助成される制度です。対象年齢、所得制限の有無、自己負担の有無など、各自治体によってさまざまですので、特に転居の際などには必ず確認しましょう。

未熟児養育医療給付制度
出生時の体重が2000g以下で生まれた赤ちゃんは、「未熟児養育医療給付制度」があり、必要な医療費がサポートされます。出生届といっしょに自治体に申請をしましょう。

産科医療補償制度
万が一、赤ちゃんが脳性麻痺と診断された場合は、「産科医療補償制度」による補償があります。くわしくは下記の産科医療補償制度のホームページや『産科医療補償制度ってどんな制度?』のページ をご覧ください。
URL http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/info/?gclid=CKyN3–Sys0CFUdvvAodbpMNWg

(執筆者) 横浜市立大学大学院医学研究科産科婦人科学講座准教授 倉澤健太郎

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