妊孕性温存

公開日:2021/10/08

原田 美由紀 先生

この記事を監修したドクター

東京大学大学院医学系研究科産婦人科学 准教授原田 美由紀 先生

妊孕性温存診療とは、がんなどの病気に対する治療のために妊娠する力(妊孕性)を失う可能性のある方に対して行うものです。ただしご本人にとって最も優先されるのは原疾患の治療であり、妊孕性温存診療を行うためにがんなどの原疾患の治療方針が影響されることがあってはいけません。

妊孕性温存診療は原疾患の部位により大きく2つに分かれます。

  1. 子宮や卵巣など妊娠に直接関わる臓器の悪性腫瘍の方に、子宮全摘出や両側卵巣摘出などの妊孕性を失ってしまう治療以外の治療を行います。
  2. それ以外の臓器の悪性腫瘍、自己免疫疾患のために卵巣機能を低下あるいは廃絶させるような治療を必要としている方に、治療前あるいは中に、自分の卵子や受精卵(胚)を採取し凍結して治療後の卵巣機能廃絶に備えます。このような治療は、卵巣の良性疾患に対してすでに何度も手術を行っているにもかかわらず、また卵巣手術を必要としている方に対しても行われる場合があります。
    具体的には、初経開始以降の方で最低2週間の時間的猶予がある方には卵子あるいは胚凍結、時間的猶予がない方には卵巣組織凍結が行われます。初経開始前のお子さんには卵巣組織凍結が行われます。卵子・胚凍結に際しては、体外受精治療と同様に排卵誘発剤を用いて卵巣刺激を行い、採卵を行います。卵巣組織凍結に際しては、腹腔鏡手術を行い卵巣組織を採取します。卵子・胚・卵巣組織は凍結して将来使用する時まで液体窒素の中で保管します。

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