出産(お産の種類、分娩トラブル、帝王切開、会陰切開など)
公開日:2016/07/28
最終更新日:2024/05/22
この記事を監修したドクター
東京都立豊島病院 医師稲葉 慶 先生
出産は大きく分けて経腟分娩(自然分娩)と帝王切開があります
何ヶ月にも渡る妊娠期間を経て、いよいよ出産というビッグイベントにより赤ちゃんはこの世に生まれてきます。出産について不安を持つ方は多いと思います。まずは出産に関し理解をしていきましょう。
お産の種類には、どのようなものがあるのでしょうか。
まずは、大きく分けて経腟分娩(自然分娩)と帝王切開に分かれます。経腟分娩では吸引分娩・鉗子分娩が必要になる場合や無痛分娩を行う場合もあります。
経腟分娩
妊娠・分娩中に異常がない場合には、赤ちゃんが産道を通って生まれてくる、経腟分娩での出産となります。
■自然分娩
陣痛がきたら、あるいは破水をしたら、入院しお産の準備をしていきます。極力自然な方法で、自力の陣痛やいきみにより出産を行います。自然分娩は、自然に陣痛が来てからお産が始まるので、分娩が進みやすい傾向にあります。
■計画分娩
入院日を決めて、子宮の出口を広げる処置(頸管拡張)や陣痛促進剤を使用しながら、人為的に陣痛が来るようにします。計画分娩は、医学的な理由により行う場合と、妊婦さんや家族の希望により行う場合があります。予定日が過ぎてしまったとき、お母さんや赤ちゃんの状態から自然な陣痛を待たずに早めにお産にした方が良いとき、無痛(和痛)分娩を安全に管理する目的など、理由は施設によりさまざまです。
■吸引分娩・鉗子分娩
経腟分娩の中には、吸引分娩や鉗子分娩が行われる場合があります。これは赤ちゃんがあと少しで生まれるくらいお産が進んだ状態で、赤ちゃんの具合が悪くなったとき、お産が進まなくなってしまったときに行われます。吸引カップや鉗子と言われる大きなスプーンのような器具を用いて、赤ちゃんの頭を引っ張ったり誘導したりして早めにお産にします。
吸引分娩・鉗子分娩では赤ちゃんの頭に血腫ができることや、お顔に傷や圧痕(あと)ができてしまうことがあります。また妊婦さんの会陰の傷が大きくなる場合があります。
■無痛分娩(和痛分娩)
日本でも年々希望する妊婦さんは増加傾向で、2020年の統計では全分娩の8.6%が無痛分娩(和痛分娩)を選択しています。海外ではもっと高い確率で行われていますが、これは医療体制の違いや出産に対する考え方の違いによると考えられています。
無痛分娩は主に硬膜外鎮痛法が行われています。これは背骨の間の硬膜外腔という場所に細い管を挿入し、そこから麻酔薬を注入することで、下半身の痛みを和らげるものです。
無痛分娩あるいは和痛分娩、と言い方は病院により異なり、麻酔の方法や使用する麻酔薬の種類などで痛みの和らげ方にバリエーションがあります。方法の詳細については、各施設の方法を確認して下さい。
■会陰切開
経腟分娩で赤ちゃんの頭が出てくる時、会陰(おまた)は徐々に薄くなり引き伸ばされていきます。この伸びが不十分で会陰が狭いと、赤ちゃんの頭がなかなか出なかったり、出てくる時に切れてしまったりします(会陰裂傷)。傷が大きく深くなってしまうことが予想される場合や、赤ちゃんに苦しいサインが出ていて早めにお産にした方が良い場合などは、あらかじめ会陰切開を行います。切開した傷は医師が縫合します。
会陰の傷は、その深さにより第1度から4度にまで分けられます。会陰の傷が深く、肛門を締める筋肉(肛門括約筋)や肛門まで達してしまうものを第3度・第4度会陰裂傷と言います。この場合は肛門や直腸の粘膜や筋肉を慎重に縫合する必要があります。
帝王切開
続いて、何らかの理由により経腟分娩にリスクが伴う場合、あるいは不可能な場合に、医師の判断により選択されます。帝王切開は希望で行うことはできません。
日本では約20%の妊婦さんが帝王切開により出産をしています。帝王切開は計画的に行う場合と緊急で行う場合があり、それぞれ以下のような理由によるものがあります。
■予定帝王切開
・骨盤位(逆子)
帝王切開の方が経腟分娩よりも赤ちゃんの周産期死亡や合併症のリスクが減るという報告から、一般的に帝王切開が選択されます。一部の施設では経腟分娩でもリスクが高くないと考えられる妊婦さんに限り、経腟分娩が選択できる場合もあります。
・既往帝王切開後妊娠、既往子宮術後妊娠
帝王切開や子宮筋腫の術後など、子宮に妊娠前から傷がある状態です。陣痛により子宮破裂のリスクがあるため、帝王切開が選択されます。施設により経腟分娩が選択できる場合もあります。
・多胎妊娠
双子、三つ子の場合には一般的に帝王切開が選択されます。
・前置胎盤
胎盤が子宮口を覆っている状態なので、経腟分娩を行うことはできません。予定よりも早く出血をきたして、緊急帝王切開になることも多いです。
・子宮筋腫や子宮奇形のある方、妊婦さんに頭や心臓の病気がある場合、赤ちゃんの病気などの理由により帝王切開となる場合もあります。
■緊急帝王切開
・胎児機能不全(NRFS)
子宮内で赤ちゃんの具合が悪く、早急に赤ちゃんを出した方がよい状態です。経腟分娩よりも緊急帝王切開の方が早く赤ちゃんを出してあげられる場合に選択します。
・常位胎盤早期剥離
胎盤が赤ちゃんが出てくるよりも先に剥がれて子宮内で出血してしまう状態です。妊婦さん、赤ちゃんともに非常に危険な状態ですので、緊急帝王切開が必要となります。
・妊娠高血圧症候群
妊娠中に血圧が上がってしまう病気ですが、血圧だけでなくタンパク尿が出たり、痙攣を起こしてしまったり、腎臓や肝臓、赤ちゃんの発育などに障害が起きてしまった場合は、早急にお産にする必要があり、緊急帝王切開となる場合と経腟分娩が選択される場合とがあります。
・予定帝王切開の妊婦さんが、手術予定日より先に陣痛が来たり、破水してしまったときなどがあります。
出産方法の選択については、施設により異なる部分がたくさんありますので、お産予定の病院と相談するようにしましょう。
もっと知りたい! ドクター監修の記事を続けて読む