摂食障害(拒食、過食)

心理的ストレスで起こる心身症

摂食障害とは、心理的な原因でスムースに食べることができなくなる病気で、女性に多い拒食症(医学病名:神経性やせ症)や過食症、性別は半々の過食性障害の3型があります。

拒食症は小食と過剰な運動でひどく痩せて、女性なら無月経になります。途中から飢餓の反動でむちゃ食い発作が始まりますが、嘔吐や下剤乱用でやせています。過食症もむちゃ食い発作があり、やせ願望が強く、嘔吐や下剤を使って体重を増やさないようにしています。ただ、体重は正常以上です。

2014年に新しい病気として認められた過食性障害はむちゃ食い発作がありますが、やせる行為をしないので、肥満が多くなります。

心理的な原因が体の症状を起こす病気を心身症と呼び、精神病とは違います。

痩せたい心理、むちゃ食いして嘔吐する心理

「やせ」の最大のメリットは、心理学的には「回避」と言われ、嫌な現実や不安な事を避けられるような気持ちのなるのです。辛さへの感受性が鈍くなるので、嫌な勉強や練習もこなせて成績が上がります。周囲の気遣いや義務の免除なども得られます。

反対に、体重を増やすことは現実に向き合う怖さがあるので、受診を渋ります。体重が回復すると不安が増して、ひきこもりになることもあります。誤解されていますが、「やせ」はファッション性の追求ではありません。

過食は意志が弱いからと誤解されていますが、過食の最中は人が変わったようになり、自分も周囲の人も止めることができません。食べている間だけ嫌なことをすべて忘れられる解放感があります。過食するのは砂糖や脂肪に富む食品です。高カロリー食品しか快感にならないことが脳科学で分かっています。

もう一つの問題は、やせていなければ自分の価値はないというほどの痩身や体型への強いこだわりです。そこで、自分で嘔吐したり、決められた量以上の下剤を飲んだり、翌日は絶食や過剰な運動をすることで過食を帳消しにしようとします。過食・嘔吐後には、自分を責めて気分はブルーで、欠勤や約束もドタキャンしがちです。

拒食症や過食症の原因

通常、私たちはストレスそのものは変えられなくても、考え方を変えたり、誰かに相談したり、気晴らししたりして乗り切っているのが実情です。乗り切れなくなった時に、やせやむちゃ食いで心の破綻を回避しているのが摂食障害です。

発病の背景には遺伝、性格、環境、社会文化の影響があります。最近、拒食症では8つの遺伝子との関係が深いことが明らかにされました。もともとの性格が真面目で、完璧主義で、怖がりの方が多いのですが、回復後でも脳の不安や報酬にかかわる部位の反応が異常で、先天的な素因があることもわかってきました。

しかし、1970年代からの患者数の増加を遺伝子や性格だけで説明できません。先進国、都市部、高難易度の学校はそうでない場合より患者数が多いという事実から、社会文化の影響が大きいと言えます。女性は社会進出とともにライフスタイルが変わり、新しいストレスが増えました。

一方で、マスメディアやファッション誌は「やせることは自信が持てる」という刷り込みをしてきました。挫折感を抱えた若い女性が手っ取り早く自信をつけようとダイエットに走り、その一部が発病している可能性があります。

20世紀には家族が摂食障害の原因であるという学説が広まり、いまだに一般社会に誤解があります。しかし、これまでの研究で、家族が原因という科学的根拠はありません。一方、家族の適切な支援が回復に効果的という数多くの報告があります。

摂食障害の治療方法

病気なら医療機関で治療を始めるのは当然のことですが、摂食障害ではなかなか円滑に運びません。それは拒食も過食も本人を守る役割があるからです。

摂食障害は「悪友」や「溺れた時にしがみ付く丸太」と表現されることもあります。拒食症では命を落としそうなほどやせていても、嫌なことに対する感受性が鈍くなって楽なのです。体重が増えることには高所恐怖症のような恐怖を感じます。また、自分だけ太って見える視覚的な認識障害があるので、病気と認めずになかなか受診しません。

過食症の人は、「過食さえなければ」と言いながら、過食をしているときだけ気持ちが解放される快感を得ているので、治療を中断することが少なくありません。家族は常識では病気を理解できずに的外れなことを言って、関係が悪くなりがちです。本人は、なぜ過食や拒食に逃げ込まなければならなかったかを気付いて優しくして欲しいのです。

ストレス病である摂食障害からの回復の最終目標は、ストレスと受け取りやすく溜めやすい完璧主義、白黒志向、○○すべきという「べき思考」など認知の偏りを修正し、「我慢する」「がむしゃらに頑張る」だけではなく「他人の力を借りる」「時には逃げる」など多彩な対処(コーピングスキル)ができるようになって、これまで使っていたストレス対処法であるやせや過食を手放すことです。

断るスキルやお互いの意見を尊重して落としどころを議論するアサーションスキルも苦手な人も多く見られます。特定の領域では優秀にもかかわらず、自尊心や自己肯定感が低いことも特徴です。

これらは、回復とともに経験的に、あるいは主治医との面談で学んだり、心理士とのカウンセリングで専門的に会得したりしていきます。

過食症には抗うつ薬や抗けいれん薬などが使用され、2018年4月から認知行動療法が保険収載されました。神経性やせ症は、栄養失調のために死亡率が高く、管理栄養士の栄養指導や入院による栄養療法などである程度の体重回復が優先されます。ただ、体重増加を最も恐れる病気なので、治療には困難が伴います。

また、極度のやせは思考力を低下させ、人柄まで変えてしまうので、この時期の精神療法の効果はあまり期待できません。脳機能が回復してから過食症と同じような心理的支援を行います。

正しい情報を得ることが回復のスタートになる

インターネットには摂食障害に関する情報が多く見られます。ただ、個人的なものや偏った内容もあります。現在、摂食障害全国支援センター一般社団法人日本摂食障害協会で最新の情報が得られます。

欧米では、ネットで学ぶe-ラーニングも行われています。自分の病気を学ぶことが回復のスタートになります。