避妊
公開日:2016/03/29
最終更新日:2024/01/31
この記事を監修したドクター
帝京大学医学部附属病院 産婦人科平野 茉来 先生
目次
二重の防御「低用量ピル+コンドーム」がオススメ
日本では避妊法としてコンドームを選択する人が多いですが、実は、コンドームをつけているのに妊娠してしまう人が約14%!なんと7組に1組は1年間に1回くらいは、きちんとコンドームを使用していたのに妊娠しているのです。コンドームは避妊法としては効果が低い方法。だから、より確実な避妊効果が期待できる経口避妊薬「低用量ピル」をオススメします。
そして、HIV/ エイズなどの性感染症(STD)の予防としてコンドームを併用する、つまり二重の防御=Dual protection(デュアル・プロテクション)をオススメします。
若い女性にオススメ!低用量ピルは女性の味方です
世界では経口避妊薬「低用量ピル」が主流。ドイツでは、若い世代の7割が低用量ピルを選択しています。
低用量ピルの特徴は以下のとおりです。避妊以外にもさまざまなメリットがあるので、オススメです。
【ピルのメリット】
・ 毎日1粒ずつ飲むだけでほぼ確実な避妊ができる
・ 女性が主体的に妊娠するかどうかを決めることができる
・ 月経を自分の好きな日に移動できる、月経痛が軽くなる、月経量が減る、ニキビがきれいになるなど 避妊以外の利点がある
・ 妊娠を希望する場合は、服用をやめるだけ
・ 健康な若い女性が服用する場合には、副作用は極めてまれ
リスク、副作用は怖くない?
一方で、低用量ピルの一般的な副作用として吐き気、頭痛、不正出血などがありますが、これらのマイナートラブルは大半の場合、最初だけで、飲み続けたら消えるものです。重い副作用のひとつに静脈血栓塞栓症があります。低用量ピル服用女性の静脈血栓塞栓症の頻度は、わずかですが増加するといわれています。静脈血栓塞栓症の症状としては、激しい頭痛、急に目が見えにくくなったとかしゃべりにくくなった、激しい腹痛、下肢のむくみや痛みなどがあります。
低用量ピルを服用中に症状がでた場合は、必ず処方医に相談してください。早期に診断して治療すると、重症化しないこともわかっています。静脈血栓塞栓症は低用量ピルの内服を開始してから3カ月以内がもっとも多いことや、肥満、喫煙、女性の場合にそのリスクが上昇することもわかっており、40歳以上の女性が使用する場合はより慎重にしています。
また、高血圧や喫煙は心筋梗塞のリスクを、片頭痛や高血圧は脳卒中のリスクを上昇させることがわかっているので、内服前の禁煙指導や血圧の管理が必要です。
このように低用量ピルにはデメリットもありますが、メリットのほうが多いことから世界的にも広く使用されていますし、低用量ピルを内服している女性はしていない女性と比較して全体の死亡率が低いということもわかっています。
避妊にもっとも大切なもの=「避妊する意思」
いくら避妊法を知っていても、使おうとしなければ意味がありません。避妊行動を取れるかどうかは、ホンモノの愛かどうか、見分けるチャンスです!
・ 男子 = 言われなくてもコンドーム
・ 女子 = 人生の決定をパートナー任せにしない。妊娠するかしないかは、自分で決めよう
本当に不思議ですが、妊娠すると、どんなに望まない、予期しない妊娠であっても、男女とも「産みたい」「産ませてあげたい」という気持ちになります。特に気持ちがまっすぐな10代の場合は、この気持ちを越えて産む・産まないを選択するのが、とても難しいのです。だから確実な避妊が必要。「1回なら大丈夫」「1回目が大丈夫だったから2回目も大丈夫」「10代だから大丈夫」はありえません。
緊急避妊法「モーニングアフターピル」
コンドームが破けた・脱落した、コンドームからもれた、ピルを飲み忘れた、避妊しないセックスをした…
など、「妊娠するかも」と思ったら、72時間(3日間)以内に婦人科を受診し、緊急避妊ピル(ノルレボ錠2 錠)を1回飲むだけで、80%は望まない妊娠を避けることができます。
・ 健康保険はききません(1回1万5000~2万円前後)
・ 効果は80%(緊急避妊ピル服用後、次の月経までセックスを避ければ、効果は約90%とも)
・ 副作用はほとんどなし
・ 性交後2週間ほどで必ず、妊娠検査薬で妊娠していないことを確認すること
緊急避妊ピルはあくまで「緊急」。緊急避妊後は、低用量ピルを使用してより確実な避妊を始めることをオススメします。
さまざまな避妊法とその特徴について
① 妊娠率(避妊の失敗率)理想的な使用をした場合、一般的な使用をした場合
※100人の女性がある避妊法を使用した場合、1年後に妊娠する人数
② 費用
③ 特徴
1)経口避妊薬(低用量ピル)
① 0.3%、8%
②1カ月分 約2500~3000円
③毎日決められた通りに1粒ずつ服用するだけなので、「理想的な使用」がしやすい。婦人科で処方できる。避妊以外の利点もある。副作用は極めて少ない
2)銅付加IUD
① 0.6%、0.8%
② 約3~4万円
③ 5年間有効。婦人科で子宮内に挿入する。月経量が増える場合がある。
3)薬剤付加IUD
① 0.1%、0.1%
② 約6~8万円
③ 5年間有効。婦人科で子宮内に挿入する。月経量が少なくなる
4)コンドーム
① 2%、15%
② 1枚約50円
③ 性感染症予防ができる。手に入れやすい。確実な使用には技術が必要である。
5)リズム法(オギノ式)
① 1~9%、25%
② 0円
③ 月経周期から「妊娠しやすい日」を見分ける方法。失敗する確率が高い。
月経不順があるとさらに不確実である。
6)性交中絶法(腟外射精)
① 4%、19%
② 0円
③ 技術的に困難である。失敗する確率が高い。
7)女性避妊手術
① 0.5%、0.5%
② ―
③ 婦人科で手術が必要。不可逆的(もとの状態に戻せないこと)である。
8)男性避妊手術
① 0.10%、0.15%
② -
③ 泌尿器科で手術が必要。不可逆的(もとの状態に戻せないこと)である。
9)避妊しない
① 85%、85%
(執筆者)女性クリニックWe!TOYAMA代表 種部恭子