厚生労働省研究班(東京大学医学部藤井班)監修

ヘルスケアラボ健康相談窓口

過食嘔吐について

高校三年生のときに引退して3ヶ月程で10キロ以上太ってしまいました。しかし、スタイル重視な部活動をしているため、どうしても太っちゃいけない、痩せたいという思いから自ら吐くようになりました。

しかし、お腹がいっぱいでも食べたいという気持ちは治まらない。しかし、食べたらすぐに罪悪感で吐かずにはいられず。親にも相談できません。吐いてしまうなら食べなければいいと思うのですが、どうしても食べてしまいます。

しかし、どうせ吐くのに食べてる自分、吐いてしまう自分、どうしても食べたくて食べ物にたくさんお金を使う自分、それでも太っている自分を考えるとすごくつらくなりました。何をしているのだろうって惨めというか、とにかくつらいんです。今日、なぜか涙が出てきました。どうやったら治りますか。

ヘルスケアラボからの回答

ご質問をありがとうございました。一人で苦しんでおられ、辛さをお察しします。

最初に体重、月経、食欲の関係を解説させていただきます。体格を示すBody mass index(BMI)は体重(㎏)÷(身長(m)x身長(m)で、18.5未満はやせ過ぎ、最も病気が少ない標準が22、18.5~25が正常範囲です。18.5未満では無月経や月経不順が増えます。これには体脂肪から出るレプチンというホルモンが重要で、体脂肪12.5%未満ではほぼ無月経になることも知られています。このレプチンは過剰な食欲を抑える作用があります。日本人女性では、骨粗鬆症の予防には20以上が必要との報告もあります。

質問者の身長と体重や月経状態が不明なので、推測でお返事することをお許し下さい。
高校2年生まで審美系スポーツをされており、食事量は普通かそれ以上でも運動量が多いので、やせ型だったと推測します。スポーツをやめると、運動量は低下しても事量はすぐには減少しないので、たいてい体重は増えます。あるいは、高校2年生までは食べたい食品を食べないようにしてやせ過ぎなら、10㎏の増加というのも珍しくないでしょう。例えば、身長160㎝で体重は47㎏(BMI:18.5)から57㎏(BMI:22.2)になったとしても正常範囲です。やせ過ぎに見えるフィギュアスケーターが引退すると体重が増えて健康的な映像をよく見ます。

質問者は再び審美系のスポーツを始められたので、以前のやせ型を維持したいと思われるのは当然です。「やせたい、細い体型を維持したい」という思いで、朝昼食を抜くなどの過激なダイエットをしていませんか?高校2年生まではかなりな低体重を達成できますが、成人に近づくと、子ども時代と違ってそれほど痩せられなくなります。

脳は体重減少には敏感で、体が飢餓と感じると、自分で抑えられないむちゃ食い、つまり、過食が始まります。リバウンドするダイエット経験者がなんと多い事でしょう。適切なダイエットは、100種類以上の栄養素が不足しないようなバランスの良い規則正しい食事で、炭水化物は十分に摂取して、脳に飢餓と感じさせないようゆっくり減量します(1か月1㎏、2~3㎏減少で、その体重を維持、問題なければ、また、ゆっくり減量)。目標体重は月経が止まらない体重までです。

それでも、途中でリバウンドが起きがちです。数か月は体重減少に成功しても、無理な原料ではすぐにリバウンドします。浅田真央さんの栄養士だった「一流アスリートの食事(金子恵美著)」や、スポーツ栄養学の第一人者「スポーツ栄養学がわかる(杉浦克己著)」はお勧めです。質問者の方は嘔吐されているので、脳は常に嘔吐後の飢餓を感知して、さらに過食させるというリバウンドを繰り返していると言えます。

質問の内容で気になったのは、「お腹がいっぱいでも食べたい」と言う点です。これは、摂食障害の過食症の心理に当てはまります。過食症とは、ストレスを感じやすく溜めやすい方に生じるむちゃ食い発作です。自分で抑えることができず、週1日以上の過食と嘔吐が3か月以上続いている状態です。食費も1か月数万円にもなります。「過食が憎い、過食さえなければ」と言いながら、過食が始まると嫌なことを一時的に忘れることができる開放感を感じます。

しかし、一方で強いやせ願望があるので、過食に罪悪感を感じ、自分を責めて、体重増加を防ぐために指を突っ込んだりして嘔吐します。嘔吐するものは食品だけでなく、体がリサイクルすべき唾液、胃液、十二指腸液も失うので、先ほど解説した脳の飢餓への反応で、また過食してしまいます。過食は空虚感や満たされない気持ちの癒し、嘔吐は嫌なものが体から出ていくし痩せられる快感をもたらして、癖になってしまいます。過食症の病気の解説や治療法は「DVDとテキストで学ぶ 摂食障害:見る読むクリニック ( 鈴木眞理 西園マーハ文 小原千郷著 星和書店)」が参考になるでしょう。

少ない情報から一般論を解説させていただきました。過食症の疑いがあれば、一人で悩んでもなかなか解決の糸口が見つからないでしょう。過食症は気遣いし過ぎる優しい方に多い病気です。1980年から患者数が増加している新しい病気で、残念ながら、医師ならば誰でも精通しているとは言えません。大学の保健管理センターの心理士に支援やその後の受診の応援を頼むことをお勧めします。受診科は精神科や心療内科です。また、胃酸による逆流性食道炎や酸蝕歯(胃酸で歯のエナメル質が溶けること)の検査もしてください。

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