更年期の治療法
公開日:2016/05/23

この記事を監修したドクター
帝京大学ちば総合医療センター産婦人科 助教山口 広平 先生
「ホルモン補充療法」を味方につけて
ホルモン補充療法の効果とは?
ホルモン補充療法によって期待される効果としては、発汗などの更年期症状の軽減のほかにも、骨量を増やすため、骨折の予防やコレステロール代謝を変えるため脂質代謝の改善、さらに腟の萎縮症状といった泌尿生殖器症状の軽減があります。更年期のうつ症状を軽くし、皮膚のシワを減らすといった作用もあります。
一般的に、子宮全摘後の人は、エストロゲン剤のみ、子宮がある人の場合には、エストロゲン剤とプロゲステロン剤が併用されます。これは、子宮体がんの予防のために大切で、また周期的な飲み方を行うと、比較的性器出血の予想が容易になります。
ホルモン補充療法が導入された当初は、動脈硬化や尿失禁の治療やアルツハイマー病に対する効果も期待されたホルモン補充療法ですが、2002 年の米国大規模臨床試験ではこれらの作用は明らかにはなりませんでした。
ホルモン補充療法に副作用はあるの?
ホルモン補充療法の副作用として注意しなければいけないのは、女性ホルモンによって悪化する子宮体がん・乳がんや静脈血栓症が挙げられます。原因不明の性器出血や心筋梗塞などの冠動脈疾患の既往のある人は、ホルモン補充療法を避けるべきだと考えられています。このような疾患の有無は、治療開始前に検査を受けスクリーニングされることが重要です。
更年期の治療として大切なことは、この時期の生活習慣(食、運動、睡眠など)を見直すことを第一に考え、ホルモン補充療法は必要最少量、かつ短期間の使用として、乳がんや子宮体がんなどの検診を怠らないこと、などが挙げられます。
適切な使用法と副作用予防に注意し、ホルモン補充療法のリスクとベネフィットをよく理解して、安全な治療を心がけましょう。
漢方薬も更年期障害の治療は得意分野です
更年期障害の治療には、女性ホルモンのバランスを整える漢方薬が使われます。しかし、女性ホルモンを変動させることはありませんので、乳がんや子宮体がんの既往のある人にも使えます。漢方的に言えば、気、血、水のバランスを整える処方です。イライラ、頭痛、肩こりなどの症状は “気” のバランスの乱れ。不眠、疲労感、肌のくすみは “血” のバランスの乱れ。めまい、冷え、むくみなどは “水” のバランスの乱れと考えて漢方薬を処方します。
貧血気味で冷え症、めまい、頭重感がある人には「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、肩こり、イライラ、不眠などがある人には「加味逍遥散(かみしょうようさん)」 、強い肩こり、多汗などがある人には「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」、のぼせ、便秘、イライラ、興奮などがある人には「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」、などが更年期障害でよく処方される漢方薬です。
更年期治療をよく行っている婦人科で処方してもらえます。
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