更年期障害とは?

公開日:2016/03/30

最終更新日:2023/03/08

平池 修 先生

この記事を監修したドクター

東京大学医学部附属病院女性診療科・産科 准教授平池 修 先生

更年期障害の症状は多彩で重症度も異なります

日本人の閉経(1年間月経がない状態)平均年齢は、50.5歳ですが、これを挟んだ前後10年間を更年期(周閉経期)と呼びます。加齢とともに卵巣から分泌されるエストロゲン量が低下しますが、同時に身体の機能低下と社会環境の変化も起きることが多く、身体的、精神的症状が現れるのが更年期障害です。

症状の程度には個人差がありますが、早い人は40代に入ってすぐ症状を自覚することもあります。エストロゲンレベルの低下はすべての女性に起こりますが、全員が深刻な更年期障害を起こすわけではありません。更年期障害を起こす背景には、心的ストレスや性格的なものが強く影響し、たいした症状を感じないまま過ぎる場合もあれは、日常生活に支障をきたすほどひどくなる場合もあります。

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更年期障害の代表的な症状は…

更年期症状は100種類くらいあるとも言われていますが、おもな症状は次のようなものです。

・血管運動症状(ほてり、のぼせ、発汗冷えなど)
・精神症状(イライラ不安不眠抑うつ、無気力)
・関節などの症状(腰痛、関節痛、肩こり
めまい
耳鳴り
頭痛
・動悸
・息切れ
疲労感
・皮膚症状(乾燥、かゆみ、湿疹など)

エストロゲンレベルが低下しますと、腟の乾き、性交痛、頻尿、尿失禁、膀胱炎などの症状を呈しますが、これらは最近GSM(genitourinary syndrome of menopause)関連症状といわれています。

更年期障害は我慢しないで、治療も有効です

生理不順になってきていて、前述のような症状を訴える場合は、更年期障害と推測できますが、実はほかの病気を見逃していた、ということもありえます。

糖尿病(内科)、甲状腺機能低下症(内科)、メニエール病(耳鼻科)、手指関連疾患(整形外科)など、50歳近辺で頻度が多くなる疾患もありますので、これらの除外が重要です。更年期障害を疑う場合にはセルフチェックをしてみましょう。


血液中のホルモン濃度測定は、更年期の診断の補助に使えます。エストロゲン分泌の低下とセルフチェックで高得点になっている場合には、ホルモン補充療法(HRT)、漢方薬などの補完代替医療による治療が行なわれます。

HRTに使うホルモン剤はいろいろありますので、医師に相談しましょう。ホルモン剤と漢方薬を併用して使うこともできますし、漢方薬、またはエクオールやプラセンタなどで対処する場合もあります。自律神経調整薬、睡眠剤や向精神薬を使うこともあります。

日本人女性の平均寿命は今や87歳であり、閉経後の人生が昔に比べ極端に長くなっています。更年期は人生のターニングポイントです。ここでもう一度自分の人生を見直し、今までの生活パターンをシフトさせることこそ、この時期に必要なことです。更年期をネガティブに捉えず、生きがいを持って生き生きとした毎日を過ごすことが更年期障害の予防といえます。

どんな治療がありますか?

女性ホルモンの低下による不調に対しては、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬による治療が行なわれます。

HRTに使うホルモン剤はいろいろありますので、症状により使い分けができます。ホルモン剤は内服薬のほかに、皮膚に貼るパッチ剤や皮膚に塗るジェル剤もあります。
腟の乾きや性交障害には、ホルモン剤の腟錠や潤滑ゼリーなどが有効です。

ホルモン剤と漢方薬を併用して使うこともできますし、漢方薬だけで対処する場合もあります。
また、自律神経調整薬、睡眠剤や向精神薬を使うこともあります。

ここで大事なのは、更年期障害の背景に心的ストレスや性格的なものがあるので、薬物療法だけでは十分でないことがある、ということです。カウンセリングが有効なこともあります。

平均寿命が80歳を超えるようになった今、更年期から後の人生が昔に比べ長くなっています。
ある意味、更年期は人生のターニングポイントです。ここでもう一度自分の人生を見直し、今までの生活パターンをシフトさせることこそ、この時期に必要なことです。
更年期をネガティブに捉えず、生きがいを持って生き生きとした毎日を過ごすことが更年期障害の予防といえます。

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