子宮筋腫

公開日:2016/03/29

宮本 雄一郎 先生

この記事を監修したドクター

東京大学医学部附属病院大学女性診療科・産科 助教宮本 雄一郎 先生

どのような病気でしょうか?

子宮筋腫は、子宮筋層に発生する良性の腫瘍で、女性ホルモンの影響を受けて発育(大きくなる)します。女性ホルモンが分泌している20代~40代に発生・発育し、閉経後には縮小します。

筋腫が発生する部位によって、症状は異なります。
多い症状は、子宮の内側(内腔)が変形することによる過多月経と、それによる貧血、月経血の流出障害による月経痛の増悪、子宮筋腫の変性や虚血による筋腫自身の痛みです。

どのような検査をしますか?

婦人科では、内診と経腟超音波検査で、筋腫の大きさや筋腫のある部位が容易に診断できます。
筋腫が大きくなるのは緩やかで、悪性化はしません。けれども、急速に大きくなる筋腫や、女性ホルモンの分泌が低下する更年期以降になっても大きくなり続ける場合は、子宮肉腫の可能性がないかどうかを確認する必要があります。
一度はMRI検査を行い、肉腫を疑う所見(腫瘤内の出血所見、早期造影効果、リンパ節腫大など)がないか確認が必要です。
さらに、筋腫が大きくなる速度や症状を評価するために、経腟超音波検査で3か月~1年の間隔でフォローアップを行います。

過多月経がある場合には、ナプキンの大きさ、ナプキンの交換頻度によって月経量とQOLを確認して、貧血の進行を客観的に確認します。

閉経まで逃げきれれば治療の必要はありません

閉経によって女性ホルモンが低下すると筋腫は徐々に縮小し、過多月経などの症状も消失します。
そのため、無症状~症状が軽度の場合、治療は不要です。

過多月経、貧血、月経痛が強い場合には…

貧血がある場合、過多月経だけが原因ではなく、鉄の吸収が不良である場合もあります。鉄剤やサプリメント補充で、貧血が改善して、維持できるなら、手術適応にはなりません。
月経量が多い場合は、低用量ピルや薬剤付加IUD(プロゲストーゲンを徐放し子宮内膜を萎縮させる)によって、月経量の減少させることで、QOL向上が可能です。
下腹痛や月経痛が強い場合には、鎮痛剤やピルを使用しますが、それでも軽快しないか症状が持続して、QOLの低下がある場合は、根治的な意味での薬物療法、あるいは手術を選択します。

薬による治療には…

薬物療法(GnRHアナログ)は、人工的にホルモンを低下させて、閉経後状態を作る治療です。1か月に1回の注射を6か月続けて行います。
しかし、副作用として更年期障害が起こるため、人によっては継続が困難なこともあります。この治療で筋腫は小さくなりますが、6か月間治療をやめると、ゆっくりと元の大きさに戻ります。
閉経が間近な場合は、この治療を1クール~間隔をあけて数クール行うことで、閉経に逃げ込むことが可能ですが、閉経までほど遠い若い女性の場合は、骨量減少や体調不良などのデメリットが大きいため、この治療は適しません。

手術は筋腫症状によるQOL低下が著しく、患者さんが手術を望む場合に行います

手術には、開腹による子宮全摘術と子宮筋腫のみをくり抜く筋腫核出術、腹腔鏡併用による腟式子宮全摘術や子宮筋腫核出術、子宮鏡下の粘膜下筋腫切除術があります。

悪性の肉腫が否定できるようであれば、患者さんが筋腫症状によるQOL低下が著しく、手術を望む場合は手術を行います。
従来の産婦人科医療では、大きな筋腫は症状にかかわらず手術適応でしたが、今は、自覚症状がないもの、自覚症状があっても対症療法でコントロールできるものであれば、閉経を待つことは可能です。
早く手術しないと増大してからでは手術困難になるという固定観念には、全くエビデンスがありません。
極端に大きな筋腫でない限り、薬物療法で筋腫を縮小してから手術を行えば、低侵襲手術(腹腔鏡併用の腟式全摘など)を選択できます。

妊娠出産の希望がある場合の治療の選択は…

若い女性で将来的に妊娠・出産の希望がある場合、無症状の筋腫については、治療不要です。比較的大きな筋腫で、変性などにより痛みが強い場合や子宮内腔の変形が大きく過多月経が強い場合には、将来の妊娠時に筋腫が変性し、炎症を起こし流・早産につながる可能性があります。
そのため、子宮筋腫核出術を行います。筋腫が多発している場合には、術中に出血が多くなることが予想されるため、自己血輸血の準備を勧めます(保険適用)。
筋腫を核出した後の妊娠では、子宮破裂を避けるため、帝王切開術を選択する可能性が高くなります。

人生設計をして、それに合わせた治療をプランを医師とともに考えましょう

子宮筋腫は、女性のリプロダクティブ・エイジ(reproductive age)によく起こる病気です。
自分自身のライフプランを立てて、治療のメリットとデメリットを医師に相談しつつよく考え、自分の意思で将来を見据えた選択を行うことが必要です。そのために医師は最大限のフォローをします。

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