厚生労働省 研究班紹介

平成27~29年度 女性の健康の包括的支援総合研究事業計画のご説明
(この研究は厚生労働科学研究費補助金を元に行われております)

女性の健康は一生を通して月経周期、妊娠・出産、閉経などに伴う女性ホルモンの変動により大きく影響を受け、ライフステージごとのホルモン変動を意識した特別な管理が必要とされていますが、現在、女性の一生を通した包括的支援を前面に出した医療は研究が不十分です。

本研究では、“女性の健康の包括的支援“という新たなパラダイムを構築し、情報の収集と発信による社会啓発、多診療科連携による統合的女性医療、相談員の養成などを介した社会的健康支援の体制を確立することを主な目的としております。そのための情報提供の場として本ホームページが作成されております。
皆様のお役に立てていただきたいと思います。

画像:東京大学 産科婦人科 藤井知行
東京大学 産科婦人科 藤井知行

共同研究者

大須賀穣 東京大学 産科婦人科 教授

秋下雅弘 東京大学 老年病科 教授

谷垣伸治 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター・産科・教育研修部 医長

若尾文彦 国立がん研究センターがん対策情報センター センター長

金吉晴 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 災害時こころの情報支援センター成人精神保健研究部 センター長・部長

対馬ルリ子 ウィミンズ・ウェルネス対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座 院長・理事長

伊藤純子 虎ノ門病院小児科 部長

加茂登志子 東京女子医科大学附属女性生涯健康センター 所長・教授

女性が活躍する時代と言われています。女性は、家事や育児ばかりでなく、職業人としても貢献し、地域社会を支え、介護やボランティアにも活躍しています。しかし、これらすべての活躍の基盤となる女性の健康に関しては、今まであまり語られてきませんでした。
現代女性は、ライフスタイルが変化し、またライフステージによって、昔とは異なった健康問題を抱えるようになりました。男性と同じ健康問題のほかに、女性ならではの健康問題がさまざまあります。
このような現代女性の健康を応援するめに、私たちは正しい健康情報を発信するとともに、女性たちとともに新しい女性の健康支援について考えていきたいと思います。たくさんの方々のご参加をお待ちしています。
厚生労働省にも女の健康推進室が創設され、我々研究班も、真に女性に役立つホームページにしようと張り切っています。どうぞよろしくお願いします。

研究班一同

研究協力者

平池修 東京大学産科婦人科 准教授

平野茉来 東京大学 産科婦人科 助教

秋野なな 東京大学 産科婦人科 届出診療医

宮川理華子 JR東京総合病院 産婦人科 医員

編集協力

増田美加(女性医療ジャーナリスト)http://office-mikamasuda.com/

株式会社ウェブスマイル http://www.websmile.co.jp/

本研究班の研究内容紹介〜卵巣機能と女性のヘルスケア〜

1900年代になり人間が生きていく人生において、疾患とそれに関連したリスク因子との関係を検討し、最終的には適切な予防に結び付けようとする研究の流れが誕生しました。このような考え方はライフコース・アプローチと言います。女性の一生は胎生期、小児期、思春期、性成熟期、周閉経期、老年期にわたり動的な人生の変化を経験しますが、この流れを通じて一貫して重要なのは女性ホルモン・エストロゲンです。
私たちの研究班では、女性の生涯にわたる様々な疾患と関連するエストロゲンと健康や疾病との生物学的および社会的な要素を検討し、健康や疾患を人生の流れの中でとらえる考え方をしております。そのためエストロゲンの主な産生源であるヒト卵巣の病態と、エストロゲンおよびエストロゲンの作用を調節する因子の生理的意義との関連を追求するための基礎的研究を行っております。

基礎研究
・酸化ストレス応答因子Nrf2の卵巣における病態生理の解明
・小胞体ストレスの卵巣における機能と病態との関連
・乳がん抑制因子BRCA1とその調節因子のDNA修復メカニズム

卵巣における顆粒膜細胞の役割

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臨床研究内容
がん術後患者や卵巣子宮内膜症性嚢胞罹患患者は手術による卵巣機能低下を余儀なくされており、特に若年において卵巣を摘出または部分摘出された場合の長期的な健康への影響は未だに検討が不十分です。
私たちの研究班では、このような方々の長期的予後探索のための疫学的研究など卵巣手術に伴う卵巣機能低下の全身的影響を検討しています。

臨床研究
・原発性・続発性無月経など月経異常患者の骨代謝および脂質代謝の検討
・若年で卵巣摘出をされた婦人科腫瘍患者の骨代謝および脂質代謝の検討
・子宮内膜症性卵巣嚢胞のため手術歴のある40代子宮内膜症女性の卵巣機能と骨代謝との関連

研究に関連した文献
1. Preoperative assessment of factors associated with difficulty in performing total laparoscopic hysterectomy.
Saito A, Hirata T, Koga K, Takamura M, Fukuda S, Neriishi K, Pastorfide G, Harada M, Hirota Y, Wada-Hiraike O, Fujii T, Osuga Y.
J Obstet Gynaecol Res. 2017 Feb;43(2):320-329, PMID: 28150406

2. A potential role for endoplasmic reticulum stress in progesterone deficiency in obese women.
Takahashi N, Harada M, Hirota Y, Zhao L, Azhary JM, Yoshino O, Izumi G, Hirata T, Koga K, Wada-Hiraike O, Fujii T, Osuga Y. Endocrinology. 2016 Nov 25: en20161511. PMID: 27886513

3. The Emerging Role of FOXL2 in Regulating the Transcriptional Activation Function of Estrogen Receptor β: An Insight Into Ovarian Folliculogenesis.
Hirano M, Wada-Hiraike O, Fu H, Akino N, Isono W, Sakurabashi A, Fukuda T, Morita Y, Tanikawa M, Miyamoto Y, Nishi Y, Yanase T, Harada M, Oishi H, Yano T, Koga K, Oda K, Kawana K, Fujii T, Osuga Y.
Reprod Sci. 2016 Jun 1. pii: 1933719116651150. PMID: 27252187

4. A potential role of endoplasmic reticulum stress in development of ovarian hyperstimulation syndrome.
Takahashi N, Harada M, Hirota Y, Zhao L, Yoshino O, Urata Y, Izumi G, Takamura M, Hirata T, Koga K, Wada-Hiraike O, Fujii T, Osuga Y.
Mol Cell Endocrinol. 2016 Jun 15;428:161-9. doi: 10.1016/j.mce.2016.03.032. PMID: 27032713

5. Vaginal Stenosis After Gonadotropin-Releasing Hormone Agonist Therapy During Treatment for Acute Lymphoblastic Leukemia. Sato M, Harada M, Oishi H, Wada-Hiraike O, Hirata T, Nagasaka K, Koga K, Fujii T, Osuga Y.
J Low Genit Tract Dis. 2016;20(2):e11-3. doi: 10.1097/LGT.0000000000000175. PMID: 26735150

6. SIRT3 positively regulates the expression of folliculogenesis- and luteinization-related genes and progesterone secretion by manipulating oxidative stress in human luteinized granulosa cells.
Fu H, Wada-Hiraike O, Hirano M, Kawamura Y, Sakurabashi A, Shirane A, Morita Y, Isono W, Oishi H, Koga K, Oda K, Kawana K, Yano T, Kurihara H, Osuga Y, Fujii T.
Endocrinology. 2014;155(8):3079-87. doi: 10.1210/en.2014-1025. PMID: 24877629

7. Concomitant ovarian drilling and oocyte retrieval by laparoendoscopic single-site surgery led to live birth using in vitro maturation of oocyte and transfer of frozen-thawed blastocyst in woman with polycystic ovary syndrome.
Hirata T, Fujimoto A, Koga K, Wada-Hiraike O, Fujii T, Osuga Y.
J Obstet Gynaecol Res. 2014;40(5):1431-5. doi: 10.1111/jog.12365. PMID: 24754853

本研究班の研究内容紹介〜子宮内膜症〜

子宮内膜症は、月経困難症などの疼痛、不妊などの症状を引き起こし、女性のQuality of lifeに影響を与えます。子宮内膜症は、手術療法、薬物療法などがありますが、ライフステージに合わせて、その治療法を選択していくことになります。
私たちの研究室では、卵巣の子宮内膜症が手術をしたとしても5年間で3割程度の割合で再発してしまうことを報告しています。これが、子宮内膜症が手強い病気である要因の一つです。さらに、術後に低用量ピルを用いることでその再発率を1/10程度に低下させることを世界に先駆けて報告しました。また、子宮内膜症と妊娠中の合併症との関連も明らかにし、様々なステージで子宮内膜症が悪影響を与える可能性を明らかにしました。さらに、腸や膀胱、肺にできるような稀少部位子宮内膜症の疫学調査も行っています。
また、基礎研究としては、子宮内膜症と内分泌、炎症、免疫との関連を中心に、新規治療法の確立を目指して精力的に研究を行っています(図1)。

臨床研究

・子宮内膜症の術後再発に関する研究
・子宮内膜症関連不妊の研究
・子宮内膜症と妊娠中の合併症の関連
・稀少部位子宮内膜症の疫学調査

基礎研究

・子宮内膜症における炎症と免疫バランス異常に関する研究(Th2、Th17細胞)
・ビタミンDの子宮内膜症治療効果
・ブドウから抽出される成分レスベラトロールの子宮内膜症治療効果
・子宮内膜症の新規治療法の開発

図1.子宮内膜症と炎症、免疫、内分泌の関連とレスベラトロール、ビタミンDによる治療戦略

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研究に関連した文献

1. Recurrence of ovarian endometrioma after laparoscopic excision. Koga K, Takemura Y, Osuga Y, Yoshino O, Hirota Y, Hirata T, Morimoto C, Harada M, Yano T, Taketani Y. Hum Reprod. 2006 Aug;21(8):2171-4.
2. Post-operative oral contraceptive use reduces the risk of ovarian endometrioma recurrence after laparoscopic excision. Takamura M, Koga K, Osuga Y, Takemura Y, Hamasaki K, Hirota Y, Yoshino O, Taketani Y. Hum Reprod. 2009 Dec;24(12):3042-8.
3. Laparoscopic excision of ovarian endometrioma does not exert a qualitative effect on ovarian function: insights from in vitro fertilization and single embryo transfer cycles. Harada M, Takahashi N, Hirata T, Koga K, Fujii T, Osuga Y. J Assist Reprod Genet. 2015 May;32(5):685-9.
4. Assisted reproductive technology pregnancy complications are significantly associated with endometriosis severity before conception: a retrospective cohort study. Fujii T, Wada-Hiraike O, Nagamatsu T, Harada M, Hirata T, Koga K, Fujii T, Osuga Y. Reprod Biol Endocrinol. 2016 Nov 3;14(1):73.
5. Simultaneous Detection and Evaluation of Four Subsets of CD4+ T Lymphocyte in Lesions and Peripheral Blood in Endometriosis. Takamura M, Koga K, Izumi G, Hirata T, Harada M, Hirota Y, Hiraike O, Fujii T, Osuga Y. Am J Reprod Immunol. 2015 Dec;74(6):480-6.
6. Interleukin-4 and prostaglandin E2 synergistically up-regulate 3β-hydroxysteroid dehydrogenase type 2 in endometrioma stromal cells. Urata Y, Osuga Y, Akiyama I, Nagai M, Izumi G, Takamura M, Hasegawa A, Harada M, Hirata T, Hirota Y, Yoshino O, Koga K, Kozuma S. J Clin Endocrinol Metab. 2013 Apr;98(4):1583-90.
7. Interleukin (IL)-17A stimulates IL-8 secretion, cyclooxygensase-2 expression, and cell proliferation of endometriotic stromal cells. Hirata T, Osuga Y, Hamasaki K, Yoshino O, Ito M, Hasegawa A, Takemura Y, Hirota Y, Nose E, Morimoto C, Harada M, Koga K, Tajima T, Saito S, Yano T, Taketani Y. Endocrinology. 2008 Mar;149(3):1260-7.
8. Effects of 1,25-Dihydroxy Vitamin D3 on Endometriosis. Miyashita M, Koga K, Izumi G, Sue F, Makabe T, Taguchi A, Nagai M, Urata Y, Takamura M, Harada M, Hirata T, Hirota Y, Wada-Hiraike O, Fujii T, Osuga Y. J Clin Endocrinol Metab. 2016 Jun;101(6):2371-9.
9. Resveratrol suppresses inflammatory responses in endometrial stromal cells derived from endometriosis: a possible role of the sirtuin 1 pathway. Taguchi A, Wada-Hiraike O, Kawana K, Koga K, Yamashita A, Shirane A, Urata Y, Kozuma S, Osuga Y, Fujii T. J Obstet Gynaecol Res. 2014 Mar;40(3):770-8.