女性に多い疾患の検診

ここでは、婦人科検診、乳がん検診以外の成熟世代の女性に意識してほしい検査、検診項目をご紹介します。

高血圧

若い女性で、日常的に血圧測定をしている人は、決して多くないでしょう。しかし、血縁者に高血圧の人がいる、肥満気味である、塩分摂取量が多い人は、普段から自分の血圧がどの程度なのかを、把握しておきたいものです。

最近、妊娠の高齢化にともなって、妊娠時にすでに高血圧がある女性が多くなっています。このような女性は、妊娠高血圧症候群になるリスクが高いため、妊娠前から自分の血圧を知り、きちんと対策をとること(プレコンセプショナルケア)が大切です。

腎臓病

慢性腎臓病(CKD)は自覚症状がないため、早期発見するためには、検尿や採血が必要です。

腎蔵は、体内の老廃物を排泄するところです。その機能は、採血をして「血清クレアチニン値」をもとにした式によって計算されます。尿中の蛋白量が多い(2+以上)、蛋白尿と血尿がともに陽性(1+以上)、腎機能低下(eGFR 60ml/分/1.73m2未満)のいずれかがあるときは、腎臓専門医を受診してください。

慢性腎臓病は、妊娠高血圧症候群や早産のリスクになる場合があります。

糖尿病

若い女性は、糖尿病の検査をする機会が少ないかもしれません。尿中に糖が出ていれば、糖尿病の発見につながるのですが、軽いうちは尿に糖が出てこないことが少なくありません。

若くても、血縁者に糖尿病の人がいる、肥満気味であるという人は、血液検査で糖尿病のチェックをすることをおすすめします。

知らない間に糖尿病になっていると、高血糖が赤ちゃんの先天異常の原因となります。また、ご自身の糖尿病のコントロールがうまくいっていないと、腎臓や網膜などに合併症が出てくる可能性があります。

妊娠を希望する場合には、ご自身と赤ちゃんの健康のために、妊娠前からしっかり糖尿病を管理する(プレコンセプショナルケア)必要があります。

自己免疫疾患:「膠原病」「甲状腺疾患(橋本病やバセドウ病)」

免疫というのは、ウイルスなどの外敵を攻撃するために、私たちの体に備わったものですが、外敵ではなく自分の体の成分(抗原)に対して攻撃してしまうのが自己免疫疾患です。その証拠となる自己抗体をもっています。

代表的な自己免疫疾患は、関節や皮膚など全身に病気がみられる膠原病です。患者数として最も多いのが「甲状腺疾患(橋本病やバセドウ病)」です。自己免疫疾患は、若い女性に多いという特徴があります。

膠原病:「全身性エリテマトーデス(SLE)」「関節リウマチ(RA)」「シェーグレン症候群」

膠原病の代表的なものとして、全身性エリテマトーデス(SLE)」「関節リウマチ(RA)があります(下記、項目を参照)。

このほかに、女性に多い膠原病として、シェーグレン症候群があります。これは外分泌腺である涙腺や唾液腺の慢性炎症により目の渇き(ドライアイ)、口の渇き(ドライマウス)を呈する病気ですが、なかには腟の乾燥症状(ドライバジャイナ)をともなう人もいます。「シェーグレン症候群」を疑う場合には、抗核抗体、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体を検査します。抗核抗体は、細胞の中にある核のたんぱく質を抗原とした自己抗体の一種です。

*「抗核抗体」: 抗核抗体は、細胞の中にある核のたんぱく質を抗原とした自己抗体の一種です。これは、膠原病の患者さんがもっていることが多いのですが、ふつうの女性でも20%前後で検出されるので、これが陽性だからといって、すぐに膠原病だと結びつけなくて大丈夫です。しかし、抗核抗体が陽性の場合、意味のある陽性かどうかを見極める必要があります。一度は内科医、特に膠原病(リウマチ科でもよいのですが、リウマチ科は膠原病内科の医師だけでなく、整形外科の医師が担当していることがあります)を専門としている先生を受診しましょう。

「全身性エリテマトーデス(SLE)」

自己抗体(自分を間違えて攻撃してしまう抗体)によって、関節炎や皮疹、糸球体腎炎、中枢神経障害といった多彩な症状が引き起こされる病気です。症状が非常に軽く経過観察だけでよいものから、ステロイド剤や免疫抑制剤での治療を要する症状までさまざまです。

日本での推定患者は、約6万人と稀な病気ですが、20代~30代の女性に好発するため、妊娠は重要なテーマです。SLEの症状が落ち着かないまま妊娠した場合、早産や死産、妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症や、SLEの症状悪化が起きやすいことが知られています。

また、治療薬の中には赤ちゃんの異常との関連が疑われている薬剤もあるため、妊娠前に可能な限り症状を安定させて、薬剤を調整すること(プレコンセプショナルケア)が重要です。

SLEを疑う場合には、抗核抗体だけでなく、そのひとつである抗DNA抗体を測定する必要があります。このほかに、尿たんぱく、白血球減少(なかでもリンパ球減少)、血小板減少、低補体価が診断の助けになります。

抗核抗体の項目でも説明しましたが、抗核抗体は、SLEなどの膠原病の患者さんがもっていることが多いのですが、ふつうの女性でも20%前後で検出されるので、これが陽性だからと行ってすぐに膠原病だと結びつける必要はありません。ただし、抗核抗体が陽性の場合、意味のある陽性かどうかを見極める必要があります。

「関節リウマチ」

関節リウマチは、関節が腫れて痛みが生じる自己免疫の病気です。

特に、手指の関節や手首に症状が出ることが多いと言われています。女性に多く発症します(男:女 1:4)。有病率は0.4〜0.5%程度(200人に1人程度)と言われています。高齢女性の病気というイメージがあるかもしれませんが、3分の1は20歳~30歳代に発症しています。

以前は治療薬がなく、関節痛と変形に苦しむ病気でしたが、近年は治療薬が進歩し早期に適切な治療を開始すれば、痛みなく通常の生活を送ることができるようになりました。妊娠・出産することももちろん可能です。妊娠準備には、病気が落ち着いていることがいちばん大事ですので、主治医・専門家に相談しましょう。

診断のための検査には、抗シトルリン化ペプチド(CCP)抗体が有用です。従来測定されてきたリウマトイド因子(RF)やRAPA検査は、偽陽性や偽陰性が多いという点で、抗CCP抗体に劣ります。

また、手指のこわばり感で関節リウマチを心配する人もいますが、変形性関節症による場合があります。その場合には、手のレントゲン検査をすることが診断の手がかりになります。

甲状腺疾患(橋本病やバセドウ病)

「甲状腺機能亢進症(バセドウ病)」

症状としては、甲状腺の腫れ、動機、息切れ、手足の震え、多汗、体重減少、微熱、イライラ、下痢、月経不順などがあります。

なかでもバセドウ病が多い病気です。甲状腺を刺激する物質(TSHレセプター抗体)が作られることが原因です。この病気は、妊娠可能な女性に多く見られますが、薬物治療などによって、甲状腺機能がしっかりコントロールされていれば、健康な人と変わりなく安全に出産できます。

治療効果が確実で、重い副作用が少ない薬に、赤ちゃんの先天異常との関連がいわれており、どんな治療を選択するかについて、専門家による妊娠前の管理(プレコンセプショナルケア)やカウンセリングが必要です。

検査項目としては、甲状腺ホルモン(freeT4)が高値、甲状腺刺激ホルモン(TSH)低値の場合に、甲状腺機能亢進症ということになります。その原因がバセドウ病と診断するためには、TSHレセプター抗体の検査が必要です。

また、甲状腺機能低下症の橋本病でよく起こる「無痛性甲状腺炎」のこともあります。無痛性甲状腺炎は、甲状腺ホルモンが炎症で甲状腺からもれ出る病気。そこで、橋本病と同様に、抗サイログロブリン(Tg)抗体と抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体の検査も行います。

「甲状腺機能低下症(橋本病)」

おもな原因は、慢性甲状腺炎(橋本病ともいいます)です。 これは、甲状腺に対する自己抗体がつくられ、甲状腺に炎症を起こしていく病気で、甲状腺が腫れています。

症状は、むくみ、体重増加、元気がないなどですが、相当低下しないと症状は出てきません。妊娠成立や胎児の成長に大切なホルモンなので、妊娠を希望する場合には、軽い機能低下であってもホルモン補充を行います。甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素の摂り過ぎ(昆布だしやヨウ素含有のうがい薬や子宮卵管造影検査など)が甲状腺機能低下症の原因となることもあります。

甲状腺機能低下症は、検査で、甲状腺ホルモン(freeT4)が低値、甲状腺刺激ホルモン(TSH)高値となります。橋本病を疑う場合は、抗サイログロブリン(Tg)抗体と抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体の検査を行います。

骨粗しょう症

骨がスカスカになって骨折しやすくなる病気で、閉経期以降の女性に多くみられます。しかし、若い人でも極端なダイエットによる栄養バランスの不良や運動不足、ステロイド剤(膠原病や気管支ぜんそくなどで使用)使用などで起こることがあります。

骨粗鬆症自体では、自覚症状はありません。急に、腰が痛くなってレントゲン検査をしたら背骨が圧迫骨折を起こした、転んで大腿部の骨折を起こした、などがきっかっけで骨粗鬆症がわかったという例が少なくありません。予防のためには、食生活や適度な運動が重要です。さらに、ときどきは骨密度を調べて(骨塩定量ともいいます)みることをおすすめします。

コンセプションケアをご存知でしょうか?

コンセプション(Conception)とは、受胎、つまりおなかの中に新しい命を授かることをいいます。プレコンセプションケア(Preconception care)とは、将来の妊娠を考えながら、女性やそのパートナーがカップルで自分たちの生活や健康に向き合うことです。

プレコンセプションケアによって、女性やカップルがより健康になること、元気な赤ちゃんを授かるチャンスを増やすこと、さらに女性や将来の家族がより健康な生活を送れることをめざします。

プレコンセプションケアは、妊娠を計画している女性だけではなく、すべての妊娠可能年齢の女性に大切なケアです。自分を管理して健康な生活習慣を身につけること、それは単に健康を維持するだけではなく、より素敵な人生を送ることにつながります。

国立成育医療センター プレコンセプションケアセンターより

このページで紹介した、病気の検診、検査について詳しくは、こちらのページをご覧ください。
●国立成育医療センター プレコンセプションケアセンター http://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/index.html http://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/check.html