性自認と性嗜好

同性愛、多様な性のあり方

岡山大学大学院保健学研究科
岡山大学ジェンダークリニック 中塚幹也

性別はどうやって決まる?

生物学的性(セックス、からだの性)は性染色体(XY は男性、XX は女性)、性器や外陰部の形(ペニスや精巣の有無、子宮や卵巣の有無など)によって決められます。
さらに、血液検査でわかる男性ホルモンや女性ホルモンの値も参考になります。 社会的な性(ジェンダー)は、人々との関わりの中で明らかになります。物心ついた頃から「自分は男(女)である」という意識(性の自己認識:性自認、心の性)が明確になってきます。
また、人を好きになったり、つき合いたいと思ったりし始めます(性的指向)。
さらに、性別は、社会的な役割を果たすときにも強く自覚されます(性役割)。

同性愛とは?

性のあり方は多様です。同性愛(ホモセクシャル)には、性自認(心の性)もからだの性も男性で、性的指向としては男性を好きになる場合(ゲイ)や性自認(心の性)もからだの性も女性で、女性を好きになる場合(レズビアン)があります。また、性的関心や欲求を持つ対象が男性や女性などの性別に関わらない場合は「バイセクシャル」、ほかの人に対して性的関心や欲求を持たない場合は「アセクシャル(エイセクシャル)」と呼ばれます。同性愛は病気ではないし、おかしなことではありません。

多様な性のあり方

LGBTI(L はレズビアン、G はゲイ、B はバイセクシャル、T はトランスジェンダー、I はインターセックス)という言葉もあります。それぞれ異なった人たちが連帯する意味を込めてできた言葉です。
しかし、これらのどれにも当てはまらない場合もあります。また、連帯感を持つことで気持ちが楽になる人もいますが、このような既成の概念に位置づけられるのは嫌な人もいます。あなたが当事者であっても決してひとりではありません。ゲイやレズビアンの人々は、全人口の約20 人に1 人とされ、学校のクラスの中に1 ~ 2 人はいるということになります。また、性同一性障害のため医療施設を受診する人々は数千人に1 人とされますが、性別違和感を持つ子どもはさらに多く、大きな学校には1 人くらいと推測されています。

性同一性障害

性同一性障害(Gender Identity Disorder: GID、トランスセクシャル、トランスジェンダー)では心の性とからだの性とが異なり、性別違和感のため、自分のからだの性を強く嫌う心理状態が続きます。
心の性は男性、からだの性は女性のfemale to male(FTM)と、心の性は女性、からだの性は男性のmaleto female(MTF)とに分かれます。子どもの頃から、自殺念慮(58.0%)、自傷・自殺未遂(30.0%)、不登校(29.5%)などを高い確率で経験しています。特に中学生では、第二次性徴によるからだの変化への焦燥感に、制服や恋愛の問題が加わり、自殺念慮は高率になるため、文科省は学校での対応を進めています。性同一性障害は、からだへの医学的治療が行われる点で、同性愛とは異なります。思春期のからだの変化を一時的にとめておく治療を行い、この間に慎重に診断することもできるようになりました。もし、性別のことで悩んでいる場合は、保護者や保健室の先生など、理解してくれる人に相談しましょう。もし周囲に見つけられなければ、性同一性障害の当事者グループや家族会、ジェンダークリニックやGID(性同一性障害)学会などに相談してみてください。
世界的には「性別違和」とも呼ばれつつあります。あえて「障害」と呼ばなくても、治療を健康保険で行うことができるなどの体制が整ったときには、日本でも「障害」という文字が削除されることが望まれます。

性別は誰が決める?

性的指向(好きになる性)や性自認(心の性)は生まれながらに決まっているものです。
変えようとしても変えられません。無理やりに変えようされることは自身の本質を否定されることになります。
そのため、うつになってしまったり、自殺しようとしたりする場合もあります。また、ほかの人々からの嫌悪や差別を受けると自分自身もLGBTI(24 ページ参照)などに対して嫌悪感を持ち(嫌悪感の内在化)、素直に生きることが困難になります。
LGBTI の人々などを理解し支援する人々はアライ(ally)とも呼ばれます。もし、周囲に困っている人がいれば、話を聞いてみることから、あなたも始めてみてはいかがでしょう。