摂食障害(拒食、過食)

摂食障害は先進国女性の現代病

「食べる」という行為が適切に行えなくなっている状態で、食べることを拒否する拒食と、過剰に食べてその後嘔吐する過食がありますが、いずれも同じ病態と考えることができます。

摂食障害という概念が出てきたのは、1960年代ころからで、それまで女性の理想体型は豊満でふくよかとされていたのが、このころからスリム、スレンダーが理想とされるように変化してきました。
イギリスのモデル・ツウィギー。その小枝という名の通り、やせて長い手足のミニスカート姿は、全世界を席巻しました。
このころから、女性はやせることにとらわれていくことになります。これは先進諸国の都市部でのことであり、食糧難を抱える国には摂食障害が起こることはありません。

生育暦の中で自分を受け入れてもらえなかった経験が原因に…

もうひとつ、やせた体型は未熟さ、不安定さの象徴であり、女性の存在がそのようなものであること(成熟した女性性への拒否)を極端に体で表現しようとしているのが拒食ともいえます。
拒食の発症は、10代前半から始まり(初潮を迎えて性を意識する頃)、20代~30代にかけては、拒食より過食嘔吐のほうが増えていく傾向にあります。
摂食障害の患者さんは、自分に対して自信がなく、その反面思い描く理想の自分は完璧なもの、という傾向があります。
そのままの自分を受け入れられないのです。これは生育暦の中で、あるがままの自分を受け入れてもらった経験がないために起きてくる現象です。

栄養障害を起こしていることがほとんどです

極端なやせ傾向の拒食症に比べ、過食嘔吐の患者さんは、体型だけではわからないことがあります。
しかし、どちらの場合も栄養障害を起こしているので、低体重、貧血、低タンパク、むくみ(浮腫)、低血圧、歯牙欠損、便秘などの症状を起こしています。
電解質バランスが悪くなり、低カリウム血症による痙攣、不整脈や、低タンパクによる消化管穿孔を起こすと、生命にかかわることもあります。
また、体重減少によって、無月経や生理不順を起こしている場合もあります。

対処療法的な治療が中心になります

まず、摂食障害は、心の問題に大きな比重があることを理解します。
強制的に食べさせたり、また食べることを制限したりする治療が以前は行われていましたが、根本的な解決にはなりません。

実は、摂食障害を治そう、というスタンスも、有効ではないともいえます。
摂食障害というのは、あくまでも表面に現れた現象であり、それはその人がそうすることによって危ういバランスを保って生き延びている、という見方もできるからです。
ですからある意味、患者さん本人がやめようと(頭で考えるのではなく、深いところでの意識の中で)しない限り、外的な治療が効果を表すことはないのかもしれません。

ですから治療は、あくまでも対症療法的に、無月経に対してはホルモン療法(低用量ピルは有効)、生命を維持するためには栄養補給などが中心となります。
もっと踏み込んでの治療ということになると、カウンセリングが必要ではあるのですが、現在は自助グループも活動しており、その中で改善していくケースも見られます。

「まあ、いいか」という気持ちがもてるように…

摂食障害の患者さんたちは、「白か黒か」というような二元的な思考をする傾向があり、曖昧さを認めません。完璧にやれないなら初めからやらない、少しでもうまくいかないとすべてをやめてしまう、ということになります。
「まあ、いいか」というある意味いい加減なところがない、余裕がない思考法です。ですから、この「まあ、いいか」という気持ちをもてるようになることが転機になると思われます。
外からの評価にとらわれることなく、バランスの取れた自己愛と生きる目的を見出せるかどうかが鍵ですが、これは現代に生きる誰もが、多かれ少なかれ向き合わなければいけない問題なのかもしれません。