女性泌尿器疾患・骨盤臓器脱(尿もれ、頻尿、性器脱)

骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱脱・直腸脱)

筋肉や靭帯が緩むことで子宮や膀胱が外に飛び出す!

骨盤内にある子宮や膀胱、直腸は、筋肉や靭帯などの支持組織に支えられて位置を保っています。これらの支持組織が緩んでくると、だんだん位置が下がってきてしまいます。これが骨盤臓器脱です。

程度はいろいろですが、ひどくなると子宮が腟から完全に外へ飛び出してしまいます。こうなると歩行にも支障をきたします。
また、排尿や排便により、飛び出した子宮に感染を起こすこともあります。出産や加齢で骨盤底筋は緩みますから、脱は多産の高齢者に多いとされてきました。
また、重いものを持つことでも腹圧がかかって脱になるので、仕事で毎日重いものを持たなければならない人にも起こりやすいといえます。

更年期世代でも起こりやすい生活に…

ところが最近では、若い人や1、2回の出産でも脱が起きるようになってきています。これには生活様式の変化も関係しているようです。
昔は畳の部屋に着物、というスタイルが一般的でしたが、これは常に骨盤底筋を鍛える動作を促します。
スクワットを自然な所作の中で行っているようなものです。でも椅子にテーブルという生活では、下半身の筋肉を使うことはあまりありません。
現代では意識して運動しなければ、骨盤臓器脱は防げないということになります。

病院での治療は?

治療方法としては、ひとつは、昔からある手術法で、子宮を取って、腟の前壁と腟の後壁を縫い縮める手術です。
この手術は、1週間前後の入院期間が必要で、子宮を取るため、骨盤内の血の巡りが悪くなるため、2~3割が再発し、腟が裏返しになって出てくる、腟脱が生じていました。

2つ目は、女性泌尿器科の看板をあげる病院では、TVM手術という手術が行われるようになりました。

3つ目は、TVM手術の欠点を補う、TFS(TISSUE FIXSATION SYSTEM)手術です。
骨盤底筋を、臓器の支持と排泄機能の2つの重要な機能をつかさどる、動く“臓器”と考え、骨盤底筋の動きの重要な支点をテープで補強して、臓器の支持とともに、骨盤底のスムーズな動きを回復させようとする方法です。

リング(ペッサリー)を腟に挿入して固定する方法もあります。
程度が軽ければ、これでも充分QOLは保たれます。定期的な交換は必要ですが、検診のきっかけにもなるので悪くない方法です。

尿もれ、尿失禁

尿もれ、尿失禁の山は、出産後、更年期と70歳以降に

ICS(国際尿禁制学会)では、“尿失禁とは尿が不随意に漏れるという愁訴である”と定義されています。しかし、病型によって治療が異なり、一概に尿失禁とまとめて治療できません。

社会的影響、衛生状態、生活の質への影響、漏れた尿の吸収対策、尿失禁などで、日常生活の不具合や、QOLの低下があれば、受診しましょう。
最近では、女性泌尿器科という看板を挙げているクリニックもあります。

尿失禁を初めて発症する年齢には、2つの山があり、「腹圧性尿失禁」は出産後、及び更年期に悪化するため30~50代に。そして、「切迫性尿失禁」のピークは70歳以降です。

どんなときにどのように漏れるのか…

尿もれ、尿失禁の原因として、女性は、骨盤底障害が大きな原因のひとつです。
膀胱の下垂が腹圧時の防御反射の効率を低下させ、尿道括約筋の脆弱さを引き起こします。
過活動膀胱・切迫性尿失禁も、骨盤底の脆弱さがその一因といわれています。
また、脳・脊髄の疾患で引き起こされる切迫性尿失禁も良く見られます。

まずはどんなときに、どのような状態で漏れるかを見極めるのが大切です。
咳やくしゃみなどの腹圧時に漏れるのであれば、「腹圧性尿失禁」ですし、尿がしたくなってトイレに行く途中でもれるのは「切迫性尿失禁」です。
それ以外にも、尿閉のために起こる溢流性尿失禁もあります。この場合はダラダラと漏れるのが特徴です。
病院では、尿もれ、尿失禁の病型、頻度、程度、誘因の検査、診断を行い、一人ひとりの希望を聞いて、適した治療を考えます。

「腹圧性尿失禁」の治療は…

「腹圧性尿失禁」の治療は、3段階に分けられます。

第1段階としては骨盤底筋訓練です。弱くなった骨盤底筋の回復のために行います。
肛門括約筋を収縮させ、骨盤底筋を収縮させる筋力トレーニングです。1セット5~10回、1日5~10セットを12週間続けると約40%に尿失禁の改善を認めます。
しかし、パンフレットを見て、独力で骨盤底筋訓練をしてうまくできず効果が出ないこともあります。
実際に腟内診やバイオフィードバックなどの方法で指導を受ける必要があります。
また、充分な訓練をしたにもかかわらず、3か月以上たっても効果が出ないときには2段階目以上の治療を考えたほうがよいでしょう。

第2段階は、膀胱頚部支持用具とコラーゲンの尿道周囲への注入療法です。
薬物療法では、クレンブテロール(スピロペントR)が、腹圧性尿失禁に対して保険適応をしている製剤です。
近位尿道・尿道括約筋に豊富に存在するβ2受容体への刺激薬で、膀胱平滑筋を弛緩させ、尿道括約筋の筋緊張を上昇させて、尿失禁を治療します。
1回20μgを1日2回服用。副作用としては、動悸、骨格筋の強化作用で振戦がありまず。また、キサンチン誘導体、ステロイド剤、利尿剤と併用することで、低カリウム血症を起こすことがあるため注意が必要です。
薬物療法のみでは、腹圧性尿失禁が完全消失しないので、骨盤底筋訓練と組み合わせて、あくまで補助療法として考えます。

3段階目は手術療法です。
腹圧性尿失禁単独であれば、手術療法を行うことで完治可能です。
中等症以上には、薬物療法や骨盤底筋体操を長期間続けず、2段階以上の治療を行える施設を紹介します。

「切迫性尿失禁」「過活動膀胱」の治療は…

「切迫性尿失禁」「過活動膀胱」の治療は、薬物療法がメインです。
膀胱排尿筋の過活動は、副交感神経のムスカリン受容体の刺激によって引き起こされます。
抗ムスカリン作用、すなわち抗コリン作用を持つ薬剤は、膀胱の不随意収縮を抑制し膀胱容量を増加させるので有効性が高いのです。

そのため、第1選択薬として抗コリン薬を使用します。
薬剤には、塩酸プロベビリン(バップフォーR)や塩酸オキシブチニン(ポラキスR)があり、副作用として口渇、便秘、残尿の増加、散瞳による視力障害があり、閉塞性緑内障やイレウスの患者さんには禁忌です。

次に、三環系抗うつ剤の塩酸イミプラミン(トフラニールR)は、抗コリン作用を持ち、膀胱収縮には抑制的に、尿道収縮には促進的に働き、蓄尿には有利な作用を持ちます。
さらに、中枢性には覚醒促進効果があり、夜尿症治療にも使われています。

塩酸フラボキサート(ブラダロンR)は、平滑筋弛緩薬で、膀胱滑筋への直接作用で膀胱の弛緩を促す薬です。
抗コリン作用がなく、排尿障害を伴う場合に安全ですが、頻尿・尿失禁に対する効果はかなり劣ります。

困ったら恥ずかしがらずにぜひ受診しましょう

頻尿、尿もれや尿失禁のために、困っていても恥ずかしさが先だって受診しない人も少なくありません。
“年のせいで仕方ない”とは思わずに、治療できる可能性がありますので、女性泌尿器科を受診してください。

慢性骨盤部痛症候群
(膀胱痛症候群/間質性膀胱炎・外陰痛症)

「膀胱痛症候群/間質性膀胱炎」とは?

         

「膀胱痛症候群/間質性膀胱炎」は、なんらかの原因で膀胱の粘膜の障害が起こって、尿に含まれた刺激物質が膀胱粘膜下の間質に侵入し、炎症が生じて、刺激や痛みを起こす病気です。
さらに、血流の低下があると末梢神経の障害を助長すると考えられています。
最近では国際的には、間質性膀胱炎よりも膀胱痛症候群という呼び方をされるようになりました。
「膀胱痛症候群/間質性膀胱炎」は、研究用の定義(NIDDK criteria)は存在していますが、臨床用の定義は、国際的には確定していません。

①平均1回排尿量が200m以下 
②頻尿と膀胱部痛、もしくは膀胱部不快感が合併 
③麻酔をして行う水圧拡張検査後の膀胱鏡で、点状出血、五月雨状出血、亀裂などがある

この3つが、専門家(日本間質性膀胱炎研究会会員)が行った(IPD治験の際)「膀胱痛症候群/間質性膀胱炎」の定義です。
しかし臨床的には、②が自覚的に存在すれば、治療を開始します。
発症年代は、30~40代が多いとされていますが、それ以外の年代で発症する例も少なくありません。

「外陰痛症」とは?

「外陰痛症」の古典的な定義は、
①外陰部に触れたり、腟に何かを挿入しようとすると激しく痛む
②腟の前庭部を触診すると圧痛がある
③外陰部に異常な発赤がある
しかし、③はなくても構いません。

女性性機能障害、性交痛(性交疼痛症)の原因のひとつで、発症年代は20~50代が多いですが、高齢女性もまれではなく、外陰部の痛みや不快感で来院します。

「外陰痛症」とは?

外陰痛症でも、膀胱痛症候群/間質性膀胱炎と似た腟粘膜の弱さと腟粘膜下での炎症が起こることが指摘されています。

下腹部に起こる痛みの総称として「慢性骨盤部痛症候群」と言われます

膀胱痛症候群/間質性膀胱炎や外陰痛症(外陰前庭痛症)を含む概念として、「慢性骨盤部痛症候群」といわれるようになりました。
慢性骨盤痛症候群とは、悪性の病気や明らかな感染がないにもかかわらず、下腹部に痛みがある病気での総称です。
この中には、骨盤痛症候群/間質性膀胱炎、重症の月経時痛、子宮内膜症関連痛、外陰部痛、過敏性腸症候群などが含まれます。

病院ではどのように診断しますか?

膀胱痛症候群/間質性膀胱炎は、膀胱と子宮の悪性腫瘍、急性細菌性膀胱炎、尿路結石、子宮内膜症などでないこと確認します。
外陰痛症は、萎縮性膣炎、ヘルペス、真菌、細菌性腟炎でないことを確認する必要があります。

膀胱痛症候群/間質性膀胱炎は、過活動膀胱との区別が問題ですが、尿を意識的に貯めようとした際に、“尿を漏らしそうな感覚”があるのが過活動膀胱で、“不快感が増強し早く尿を出したいと感じる”のが膀胱痛症候群/間質性膀胱炎と考えて、ほぼ間違いありません。

さらに、急性細菌性膀胱炎に、年に4~5回以上かかり、一度かかると1週間以上症状が改善しない場合も、膀胱痛症候群/間質性膀胱炎の軽症例であることが多くあります。

外陰痛症は、性交時の疼痛や外陰部の自発的な違和感がある人で、通常の腟炎の治療後も、腟への触診やクスコ(腟鏡)を挿入する時の痛みを訴え、腟前庭部を綿棒で円周状に触れると、圧痛があれば確定診断となります。

病院での治療法は?

膀胱痛症候群/間質性膀胱炎は、麻酔下で行う膀胱水圧拡張治療が、施術後8割の患者さんの痛みや頻尿が改善します。診断も、治療もできるという方法です。

膀胱痛症候群/間質性膀胱炎には、ボトックス○Rの膀胱壁注射治療が、欧米で広く行われるようになってきました。日本では、健康保険適応外ですが行われています。
膀胱水圧拡張治療と、膀胱壁へのボトックス○R注射は、重症の間質性膀胱炎の場合に行いたい治療です。

内服薬で治療可能な患者も少なくありません。内服治療には、粘膜下の炎症や痛みを抑える治療と、脳の知覚過敏を抑える治療の両方を行います。

末梢の炎症を抑えるためには、鎮痛剤や抗アレルギー剤、また粘膜の刺激を抑えるために、尿のPH(ペーハー)をアルカリ化する胃腸薬や尿アルカリ化剤などを用います。
中枢の知覚過敏を改善するために、脳内のセロトニンやアドレナリン濃度を上昇させる抗うつ剤の少量の投与も行いこともあります。

外陰痛症は、ステロイド軟膏の局所塗布などや内服薬、電気・刺激刺激療法(鍼灸マッサージ療法)、漢方薬などで治療します。

また、セルフケアでストレス解消することもとても重要です。たとえば、定期的に鍼灸治療やマッサージを受けてリラックスすることも大切。
温泉や銭湯などでゆっくり入浴し、温めることで、骨盤内の不快感が解消できます。